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原子の火
 

核分裂と核融合

太陽の中では核融合反応が起きている。原子力発電所では核分裂によってエネルギーを得ている。

核融合とは複数の原子が融合して新しい原子を作る現象、核分裂は逆にひとつの原子が分裂して複数の原子を作る現象である。この時、原子の内部に蓄えられているエネルギーは、原子番号26の鉄が最も小さいため、水素のように軽い原子が融合してヘリウムになる時も、逆にウランのような重い原子が分裂して軽い原子に分かれる場合もエネルギーの放出が起きる。もし宇宙の年齢が無限であったら、この核融合・核分裂が長い年月にずっと続いていくことにより、やがて宇宙の物質は全て鉄になってしまうであろう。

莫大すぎるエネルギー

水素原子の重さは1.0078250319、ヘリウム原子の重さは4.0026032497。従って、水素原子4個が融合してヘリウム原子になった場合、差引 0.0286968779 (原子質量単位)の質量が減ることになり、これが有名な E=mc2の式によってエネルギーに変換される。

1原子質量単位は1.6605402×10-27kg、光速は2.99792458×108m/s であるから、これは原子1個あたり 4.282776881×10-12ジュールにもなる。

といってもこれではどれほどのエネルギーか見当がつかないと思うので、もう少し言い替えると、水素1グラムの核融合によって、6.62×1011ジュール = 1.58×1011カロリーの熱が出ることになり、これだけで競泳用のプール2個分の温度0度Cの水を一瞬にして沸騰させることができる。

核分裂の制御

核分裂反応を急速に実現するのが原爆であるが、実際問題として原爆は武器以外の使い道がほとんど存在しない。原子力発電所では核分裂に関係のない緩衝材をはさむことで核分裂の速度を抑えて、ゆっくりと反応させることにより、エネルギーとして活用している。しかしゆっくりさせているつもりでも、事故によって制御が効かなくなることもある。

メルトダウンと呼ばれるもので、過去にアメリカのスリーマイル島原発、ロシアのチェルノブイリ原発で、その寸前まで行ったことがある。確率論から言えば、その内どこかの国(日本かも知れない)で原力発電所が爆発してしまう事態もないとは言えない。

しかし実際問題として、同じ確率論から言えば、原子力発電所の爆発で命を落とす確率は、交通事故で死ぬ確率より、遙かに小さい(比較の対象にもならないほど)。

核融合の制御

地上で核融合を制御しようとすると、もっとやっかいである。それは核融合により発生する莫大な熱に耐えうるような容器が製造不能であることが最も大きい。

そこで現在実験レベルで行われている核融合では、核融合に使用する材料をプラズマ状態にして、その電気的性質を利用し、電磁場によって閉じこめて、その中で反応を起こさせるようにしている。

しかしこの方式の核融合では、そもそも材料をプラズマ状態にするために莫大なエネルギーが必要である。むろん、そのあとで核融合により得られるエネルギーはそれより遙かに大きいのだが、核融合発電所は充分な電力の確保できる所にしか作れないことになり、しばしば「核融合発電所は電気の増幅器である」と言われる。

放射線

核分裂や核融合を地上で行った場合にひとつ面倒な物は放射線である。

一般に放射線はα線(ヘリウム原子核)、β線(電子)、γ線(電磁波)に分けられるが、その他に中性子線などが問題にされることもある。またγ線と同じ電磁波だがγ線よりはエネルギーの低いX線も問題にされる。

これらの粒子は非常にエネルギーが高いため、生物の組織などにぶつかると、それを破壊してしまう性質がある。これが原子の火のもうひとつの怖さである。しかもいったん核物質が拡散すると、例えば原発の主燃料であるウラン235の場合、半減期が7000万年もあるので、長期にわたって、その付近は生物が近寄れない場所になってしまう。

放射線の発生源から生物が身を守るには、なにか壁を作って、そこに粒子をみな当ててしまい止めることである。このためによく使われる素材はコンクリートや鉛で、だいたい厚さ1mのコンクリートの壁があれば、放射線はほとんど透過できない。唯一の例外は電気的性質を持たない中性子線である。

これは原子炉などでは発生しないが、中性子爆弾などというとんでもない兵器が発するものである。この爆弾は爆発すると周囲数キロにいる生物を皆殺しにするが、建物などにはほとんど被害を与えないため「武器」としての価値は高い。まさに悪魔の爆弾と言える。

魔法の原子炉『高速増殖炉』

現在の原子力発電所の問題点のひとつは燃料のウランがそもそも希少な素材であり、燃料の確保に多大の費用と手間がかかることである。一部には地球上の二酸化炭素が増えている問題に関して、現在火力発電で作っている電気を原子力に切り替えれば二酸化炭素の排出量を減らせる、という意見もあるが、実際にはウラン燃料を作る過程で多大の二酸化炭素が排出されるため、それほど効果はないという反論もある。

その問題に関して脚光をあびているのが『高速増殖炉』である。

技術的に大変であるため、研究開発を断念した国も多いが、日本は毎度おなじみのイージーな設計ミスや手抜き工事に起因する事故に悩まされながらも開発のための実践的実験を続けており、現在新しい方の「もんじゅ」は事故で停止中だが、古い方の「常陽」は1977年以来20年以上も無事稼動し続けている。

この高速増殖炉の原理はある意味で単純である。

ウランには主として「燃えるウラン」ウラン235と、「燃えないウラン」ウラン238があり、天然に存在しているのはほとんどが「燃えない」ウラン238の方。原子炉の燃料の製造工程においては、この天然ウランを精製して、わずかしか含まれていないウラン235の濃度をあげている。

ところが、原子炉の中でこの「燃えないウラン238」はウラン235が崩壊して出した中性子を吸収して、プルトニウム239に変身してしまう。そしてこのプルトニウム239は、実はウラン235以上に「燃える」素材なのだ。

普通の原子炉ではこの反応はそんなに多く起きないが、高速増殖炉の場合は、この反応をわざとたくさん起こさせる。すると結果的には、この原子炉では燃やしたウラン235より多くのプルトニウム239が回収され、燃やせば燃やすほど燃料が増えるという「魔法の原子炉」になっている。

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