うるしの日(11.13)

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うるしの日(11.13)

11月13日は「うるし(漆)の日」です。これは香川県漆器工業協同組合と高松商工会議所が1985年に制定しました。

磁器が英語で China と呼ばれるのに対して漆器は Japan と呼ばれます。それだけ漆器は日本の風土になじんだものですが、これは日本で生まれた技術なのかどうかは分かりません。古く古代エジプトの遺跡からも漆を使用した道具が出土していますし、日本でも9000年前の遺跡から漆塗りの櫛が出土しています。かなり古い時代に世界的に知られていた技術なのでしょう。ただ、その技術が近年では日本で特に発達した故に、漆器をJapanというのでしょう。

その日本の漆の技術に関しては平安時代初期の惟喬親王が完成したという伝説があり、それを親王が京都の法輪寺に参籠して虚空蔵菩薩から教示されたといい、その参籠の満願の日と伝えられる11月13日を「うるしの日」に定めたものです。

その日本の漆塗りの工芸の中でも最も華麗な蒔絵の技法は歴史的に見ると奈良時代に生まれて鎌倉時代頃に技法的には完成したとされます。江戸初期には尾形光琳らにより更に芸術的に高い物へと発展し、現代の漆工芸にまで引き継がれていきます。

現代の漆の名産地はどうしても寒い地方に多いのですが、その中でも特に、青森県の津軽塗、福島県の会津塗、石川県の輪島塗は特に全国的に著名です。

(2001-11-12)


2001年にも「うるしの日」は配信したのですが、いろいろ追記したいこともあるので再度とりあげたいと思います。

青森県の津軽塗、福島県の会津塗、石川県の輪島塗は特に名が知られていますがそれ以外にも多数の漆器の名産地はあり、各々に多くのファンがいます。

■津軽塗り青森県西部の津軽地方で生産されています。良質のヒバ(あすなろ)が手に入ることを背景に発達したとも言われます。細かい江戸小紋風の模様を持つのが特色です。中塗りの段階で絞漆を使って凸凹を作り、その上に彩漆を重ね塗りしています。

■会津塗り福島県の会津地方で生産されています。蒔絵などもありますが、花塗りと呼ばれる光沢を持つ無地の塗りが美しいです。また素朴な雰囲気を持つ「金虫喰塗り」は漆を塗った上に籾殻をまき、乾燥後取り除いた上に銀粉を掛け炭で磨いて作ります。

■輪島塗石川県能登半島の輪島地方を中心に生産されています。青森にヒバがあれば能登半島にはアテがあります(材質は違いますが同じアスナロ属の木です)。輪島塗にはこのアテの他、ケヤキ、ミズメサクラ、などを使用します。この木地に「地の粉」と呼ばれる珪藻土を混ぜた漆で下地塗りをしてひじょうに丈夫な漆器に仕上げるのが輪島塗のひとつの特徴になっています。輪島塗の見た目の特徴は何といってもその蒔絵にあります。無地の輪島塗を探すのは困難であり、輪島塗といえば蒔絵が付いてくると思ってよいでしょう。

■山中塗り石川県の山中町・加賀市などで生産されています。同じ石川県でも輪島塗とは逆に無地の椀が美しい漆器です(むろん蒔絵もある)。ロクロ挽きの技術が優れているため、透明な漆を使用して木目を見せた木目溜塗の漆器も人気があります。ここは木地を他の産地にも提供しています。

■越前塗り福井県の鯖江市や福井市などで生産されています。継体天皇の時代に漆工業が始まったという古い伝説のある土地ですが、漆器より漆自体の方が有名で他の産地にかなり漆を提供しているようです。山中塗りと同様のシンプルな美しさがあるように私は感じています。

■根来塗り和歌山県の根来寺で僧が日常に使用していた漆器のように仕上げたものをいいます。根来塗りの産地は実は全国にかなりあって、中にはその地方の名前を冠した「○○根来」のようなものもあります。ある意味で日本の漆器の技術のベースのひとつです。逆に根来では根来塗りの生産は行われていません。根来塗りは本来は黒漆塗りの上に簡易な朱漆塗りをしたものですが、これを長く使用している内に朱漆が剥がれて下の黒漆が見えるようになったものが美しいとされ、現在では製造工程でわざと研いで下地が見えるようにしています。

■香川漆器高松市を中心とした地域で生産されています。蒟醤(きんま)という独特の技法があります。これは重ね塗りした漆の表面を線彫りし、そこに色漆を塗り込んだものです。元々はインドシナ地方の漆器作りの技術を輸入したものであると言われています。

漆器作りは、しばしば分業体制でおこなわれており、一般には木地師が良い木を探し出して木地を作り、塗り師が漆を塗り、加飾師が蒔絵などを施すという過程でおこなわれます。特に分業化が進んでいるのは輪島塗で六職とも八職ともいわれる職人達のネットワークで製造がおこなわれています。ただ工程があまりにも細分化されすぎて、逆に後継者不足に陥っており近い内に再編がおこなわれるかも知れません。

漆器の木地には大きく分けて次のような物があります。・木  天然の木をそのまま使用したものです。・木乾 天然木の粉と合成樹脂を混ぜて成形したものです。・樹脂 プラスチック製です。

紛らわしいもので「天然木加工品」というのがありますが、これは木乾のことであって、天然木だけで作ったものではありません。木合というのもありますが、これも木乾とだいたい似たようなものです。一般に普及品の数百円程度の漆器はだいたい樹脂に漆を塗ったものです。木乾だとだいたい数千円程度、木製になると数万円、というように1桁ずつ値段が上がっていきます。

ただし有名な人が作った漆器の場合は、樹脂製でも数千円、数万円という場合もありますので、高いからきっと木製だろう、などと考えるのは危険です。

また値段だけから見ると木製のものが木乾より良いようにも見えるのですが木をそのまま使った漆器の場合、(私たちが普通に手を出せる範囲の値段の物では)概してデザインに難があるものが多いように私は感じています。

美しい外観を持つ漆器はたいてい木乾です。天然木を微妙な形に加工するのは恐らく強度などに問題が出るのではないでしょうか。そういうわけで、私は木製の漆器より木乾の漆器の方に惹かれます。

最近は中国から原木を輸入したり、また中国で加工された漆器も多く日本に入ってきています。しかし中には生産技術の低いものもかなりあり、中国製で木製の漆器の中には、充分な乾燥をさせていない木地を使っているために、使用している内に変形したりひびが入ったりするものもあるようです。(そういう意味では中国製は木乾や樹脂の方が安全)

中国製でもある程度しっかりした作りの物は、やはりそれなりのお値段がするようです。更にそういう良質の中国製漆器を日本で更に漆の上塗りをしたものなども国産漆器より少し安い程度の値段で出回っています。

このような材質や生産地に関する情報は、漆器専門のカタログには記号で書かれていますが、一般の通販や贈答品のカタログには掲載がないことも多いようですので、購入しようという時に疑問がある場合は、販売店から生産者に問い合わせてもらったりして確認の上で買うと良いでしょう。

(2005-11-13)


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