CPU発達史(motorola)

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モトローラCPUの歴史(前)

インテルが8086,80286,80386,486といった 86 という数字がつくCPUを生産 していたのに対して、モトローラは 6800,68000,68020,68030,68040 といっ た 68という数字が付くCPUを生産していました。そのため、86系・68系とい った言葉がよく使用されていました。

インテルが8086からPentium, Itaniumに至るまでずっと命令セットを上位 互換で維持してきたのに対して、モトローラは何度か互換性を切っています。

互換性をあくまで維持し続けて古いユーザーを守るのか、或いは敢えて互換 性を切って最新の思想を取り入れるのか、両者は好対照でした。

また、インテルのCPUは例えば 0x12345678 という数をメモリーに格納する とき、78,56,34,12 という順序に格納します。これは78がこの数の中で最も 小さい数の位なので、小さい数を小さいアドレスに書くべきだという考え方 にもとづいており、リトル・エンディアン(little endian)方式といいます。

これに対してモトローラのCPUでは 12,34,56,78 という順序に格納します。
これは数字は上位の数を左側に書くべきだという考え方にもとづいており、 ビッグ・エンディアン(big endian)方式といいます。

このリトル・エンディアン、ビッグ・エンディアン、の語源はスウィフトの 『ガリバー旅行記』です。ガリバー旅行記で小人の国に行ったとき、二つの 国が戦争を始めた原因が、卵を細い方から食べるか太い方から食べるかとい う問題でした。前者がリトル・エンディアン、後者がビッグ・エンディアン です。

インテルが専らICの会社というイメージであるのに対してモトローラは 携帯電話やモデムなどといった通信分野にも強い企業で、メーカーの性格も 少し違うようです。

モトローラの歴史は1928年に始まるとされています。Paul V.Galvin(1895- 1959)とJoseph E. Galvin(1899-1944)の兄弟が、Stewart StorageBattery Company から整流器の営業権を買い取ります。そして1928年9月25日に Galvin Manufacturing Corporationを設立しました。当時ラジオが普及しよ うとしており、家庭に来ている電灯用の交流電源を整流して、直流用に作ら れているラジオの電源とするビジネスは有望と思われました。

その後会社は関連ビジネスとしてラジオそのものの製造に進出し、特に自動 車用のラジオがひじょによく売れました。そこで 自動車用の Radioという ことで、Motorola のブランド名が生まれます。(1947年に会社名も変更)

その後Motorolaはラジオの関連でトランシーバーを作ったり、テレビを作っ たりしていましたが、1950年代にトランジスタを使用したポケットラジオを 開発したのを契機に、半導体部門が設立されることになります。1960年代の 宇宙開発時代にはモトローラの通信機器はマリナ2号に乗って金星に行ったり アポロに乗って月に行ったりしています。アームストロング船長の月からの 第一声を伝えたのもモトローラの通信機でした。

1974年Motorolaは初めてのMPU 6800を製造します。これは約4000個のトラン ジスタを集積したものといいますので、同時期のインテルの8080などに比べ るとシンプルな製品だったのではないかと思われます。ついで1979年には初 の16ビット MPU 68000 を発売します。これは 8MHz 2MIPS という当時とし ては高速なMPUで、科学技術計算用に使ってもらえるように、という意図が あったようです。1980年に発売されたアポロ社のDOMAINというEngineering Work StationがこのMC68000を採用しました。このApollo社というのはNASA のApollo計画に参加していた技術者が作った会社でした。その後 1982年に 発売された Sun Microsystems の SUN も MC68000を採用しました。

当時1981年にIBMが IBM-PC をインテルのi8088を搭載して発売しています。
そこでこの時期は、パソコンはインテル、ワークステーションはモトローラ という色分けのようなものが生まれつつありました。

しかしここでモトローラの運命を大きく変える事件が起きました。

それは1983年、パソコン・メーカーのAppleが同社の「次世代パソコン」Lisa にMC68000を採用したことです。

LisaはXEROXのパロアルト研究所で開発されていた革新的なシステムをベース にしたもので、当時多くの人に衝撃を与えたものと思われます。Lisaのプロ ジェクト自体は失敗し、Appleは販売方針を変更した新型 Macintosh を翌年 出すことになりますが、Lisa/Macintoshは初めてコンピュータに詳しくない 人にも使えるよう設計されたコンピュータでした。

当時モトローラのCPUのパワーがインテルのCPUのパワーを上回っていること は恐らく多くの人が認め、それ故にMC68000は高性能のワークステーション に採用されたものと思われますが、ApolloやSunがそのパワーを純粋に処理 能力のために使用したのに対して、Appleは人間とのインターフェイスの部分 にそのCPUのパワーを最大限使ったのでした。それ故に Macintosh の CPU は IntelではなくMotorolaでなければ力不足だったのだと思います。

モトローラCPUの歴史(中)

AppleのLisaの失敗の話はまたいづれマックの歴史のところで触れると思い ますが、改めて出直したMacintoshシリーズはひじょうに多くの人に支持さ れ、一大勢力を築くに至ります。それに伴い、モトローラのCPUの売上もSUN やApolloとは桁違いのセールスとなっていきます。

モトローラはインテルに先行して1984年に初の32ビットCPU MC68020 を発売 しました(Intelのi80386は1985年)。そしてAppleも1987年に初のカラー・ モデル Macintosh II を発売。これにMC68020を搭載しました。

この1987〜1989年という時期は大きな地殻変動があった時期です。1987年に IBMはPS/2を発売。Microsoftと共同開発したOS/2という先進のOSが人々に大 きな夢を与えました。そしてこの年SUNはモトローラのCPUの使用を停止し、 自社製のSPARCを新規採用しました。Apolloは1989年経営が行き詰まりHPに 吸収されます。

こうして、Intel-IBM-Microsoft-OS/2, Motorola-Apple-Macintosh, Sun-SPARC-UNIX という現在にもほぼそのままつながるグループが形成され ます。

1987年モトローラはMC68020を改良したMC68030を発売、1989年のAppleの Macintosh IIxおよびIIcx に搭載されました。当時Intelの80286,80386を 搭載したIBMやNECのパソコンは16bitのOSしか無かったので、メモリーが 1.6MBとか多い人でも5.6MBくらいで運用されていました。これに対して、 Motorolaの68020や68030を搭載したMacintoshは少ない人でも4MB,多い人 は16MBくらいの状態で動かしていました。

インテル系で拡張メモリーの使い方がなかなか一定にならなかったのに対し て、モトローラ系では MC68030 の途中のモデルから MMU という大容量の メモリーを管理する部品がCPUに内蔵されたため、大容量のメモリーが欲し いグラフィック系の仕事に Motorola-Macintosh はよく利用されました。

このころから、デザイナーはMacを使う、というスタイルが定着し始めます。
また1990年に発売されたMacintosh II fxは40MHzという当時では信じられ ないほど高速な 68030を搭載しており「スーパーコンピュータが机の上に 来た」と言われました。そして多くの人が「将来はパソコンとスーパーコ ンピュータ以外のコンピュータは消えてしまうのでは」と思いました。

1990年にMotorolaは68040を発売。これは1991年発売のMacintosh Quadraに 搭載されます。68040ではそれまで外付けであった浮動小数点演算機構が内蔵 されました。そしてMotorolaは更に68050,68060というCPUを製造しますが、 これをAppleは採用しませんでした。このころAppleは68系CPUの能力の限界 を感じ始めていたようです。

ここから先の話はどうも不透明なのですが、以下はそのひとつの説です。

ここで、Appleの新しいCEOに就任したMichael Spindlerは次期Macintoshに RISCを採用しようという方針を決定。Motorolaの新しいRISC 88000 にマッ クのOSを移植するプロジェクトが動き出します。ところがここにIBMが関わ ってきます。IBMはMicrosoftがOS/2のプロジェクトから降りようとしていた ため、新たなパートナーを探していました。

IBMとしてはパソコンに関する生きた技術を持った頭脳が欲しい。Microsoft と手が切れてしまうとしたら、最良のパートナーはやはりAppleと思われま した。そのAppleがRISCを使おうとしている。ならばIBMが長年開発してきた Powerを使ってみませんか?と IBMが持ちかけたのが発端とも言われています。

Appleとしてはこの当時マックのマルチプロセッサ化の構想があったため、 IBMと組めばそういう高度の技術を学べる、と、この話に乗り気になります。
しかしその当時OSの88000化の作業はかなり進んでいて、今更新たなCPUに切 り替えるとなると、まさにMicrosoftに遅れをとってしまうのは明白でした。

そこで、このプロジェクトにMotorolaも巻き込み、Motoloraの88000とIBMの Powerとを合体させた新CPU PowerPC が誕生することになったのだ。。。。

ともいいます。

モトローラCPUの歴史(後)

さて、PowerPCは元々 68040などとは別系統のCPUですので、68系の命令は 持っていません。そこでAppleが行なったのは、このPowerPCで 68系の命令 をエミュレートする、という方法でした。この方法により PowerMacintosh では、68030/68040用に作られたソフトがそのまま動作したのです。

この方法はNeXT社のNEXTSTEP(OPENSTEP)の方式を多くの人に思い起こさせま した。NeXTはAppleの創業者の一人であるSteven Jobsが設立した会社ですが 当初はモトローラのCPUを搭載したNext社のマシンでUnix系のMacライクなOS を動かしていましたが、後にSPARC,HP9000,Intelなどのマシンでも動作する ようにしました。この時同様のエミュレーション方式を取っていたのです。

しかしこの方法はすこぶる危険な要素も持っていました。同様の手法でMac のOSもSPARCあるいはPentiumに移植できるのではないかと多くの人が考え、 またアップルもNeXT同様、ハードの生産をやめてソフト会社になってしまう のでは、と多くの人が予想していました。

しかしその後アップルはJobsの復帰・iMacの成功などもあり、今のところ、 そういう動きはありません。モトローラとしては頑張ってIntelに乗り換え られないようPowerPCの性能をあげて行かざるを得ないところでしょう。

PowerPCはG1,G2,G3,G4,G5 と5世代に分類されます。

G1(Generation one)とは最初に出たPowerPC(1992)で、型番としては 601に なります。0.6μmプロセスルール(つまりICの中の1個のトランジスタのサイ ズが0.6μmということ)で作られており280万トランジスタを集積しています。
クロック数は50〜80MHz。Pentium同様スーパースケラー(3本,5段)の構造です。

1995年に出た603,604がG2(Generation two)になります。G2ではプロセスル ールは0.5μmと小さくなっています。603はノート向けに設計されており、 601よりトランジスタ数もパイプラインも減らされています。逆に604はデス クトップ向けで360万トランジスタ、4本6段のパイプラインとなっています。

1997年に出たG3(Generation three)こと740,750では0.27μmルールで635万 トランジスタと大幅に性能が上げられています。これはキャッシュ専用の バス(バックサイドバス)を装備して高速化を図ったものです。私はG3を搭載 したMacintoshを初めて見た時「あ、これで何とかMotorolaも生き残ったか も知れない」と思いました。

1999年に出たG4(Generation four)こと7400では、マルチメディア用の命令 群AltiVecを装備しました。PentiumもMMXというマルチメディア命令を持って いますが、MMXが64ビット演算であるのに対してAltiVecは128ビット演算に なっています。なお、プロセスルールは0.15μmと従来の倍の集積度になっ ています。

2001年頃に出ると思われるG5(Generation five)は恐らく7500という名前に なるのではないかと思われますが、銅配線技術を使い0.1μmプロセスで、 とうとう64ビットになるようです。またバスやパイプラインの構造も一新 されることが予告されています。ただし従来の32ビットのプログラムも動作 するように作られるようです。

ということで、2001年にはIntelとMotorolaの両者が64ビットCPUを発売し、 いよいよパソコンも64ビットの時代に突入することになります。

なお、モトローラのロードマップには G6=76xx という名前も書かれていま すがどういう仕様になるかは全く分かりません。

なお、PowerPCを少しモディファイしたCPUが任天堂の次期ゲーム機に搭載さ れるようです。


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