↑ ■密教

密教とは?

密教とは、狭義には日本の仏教の中で真言宗・天台宗の2派をいいます。しかし、やや広い意味ではチベットのラマ教なども含まれ、更には他の宗教の中にも同様の傾向の宗派は存在します。それは広い意味での密教といえます。しかし、ここでは主として仏教の中の密教、その中でも特に真言宗・天台宗の2派を問題にします。なお仏教や各仏の詳しいことはお寺のコーナーをご覧下さい。

真言・天台の伝搬

密教が発生したのはだいたい8世紀頃のインドで、これがチベット経由と南方経由の2つのルートで中国に伝えられました。そして9世紀初頭に、弘法大師・空海(こうぼうだいし・くうかい)と伝教大師・最澄(でんぎょうだいし・さいちょう)という二人の僧により日本に伝えられました。

空海は中国で当時密教の第一人者であった、青龍寺の恵果和尚に学び大日経・金剛頂経の教えを日本にもたらしました。この流れを真言宗といい、京都の東寺と高野山の金剛峯寺がその中心です。

最澄は中国の天台山に学び、天台法華宗と大日経系密教を学んで日本に持ち帰りました。この教えは更に後に円仁がもっと詳細を中国から持ち帰り、しっかりしたシステムに仕上げました。この流れを天台宗といい、比叡山の延暦寺と大津の三井寺(園城寺)がその中心です。

曼陀羅

密教の思想の中で非常に特徴的なのが曼陀羅(まんだら)です。

曼陀羅とは基本的に多数の仏を並べた図形であり、絵画として表現された絵曼陀羅、仏の種子(しゅじ)を配置した種子曼陀羅、仏像を実際に配置した立体曼陀羅、などがあります。しかし絵曼陀羅の中でも特に、大日経の教えを表した胎蔵曼陀羅、金剛頂経の教えを表した金剛界曼陀羅を両部曼陀羅といって重視します。

胎蔵曼陀羅
金剛界曼陀羅

阿字観

坐禅というと一般には禅宗で行われるのが有名ですが、密教でも行われます。密教では阿字観といい、梵字の阿字(左図)を描いた「本尊」を前に置き、その阿字を見ながら瞑想をします。

阿は梵字の先頭の文字で全ての物事の根源です。それは集合論では0であり、では太極であり、神話では宇宙を生み出した混沌(カオス)です。故に本不生(何者からも生まれていない)の存在であり、その中に全てを内包している存在です。したがって、そこには全てのものを見ることができます。

多数の仏たち

密教には実に多くの仏たちが登場し、それがまた密教の特徴でもあります。また各仏には種子(しゅじ)とよばれる梵字が対応しており、また真言(しんごん,マントラ)と呼ばれるその仏に呼びかける専用の呪文があります。

大日如来(だいにちにょらい)

密教の中心仏です。華厳宗では毘盧遮那如来(びるしゃな・にょらい−奈良の大仏がこれ)といいます。大日如来は宇宙の根源仏であり、宇宙そのものです。全ての仏は大日如来から生まれたものということもできます。曼陀羅の中心に描かれます。胎蔵曼陀羅では種子アーク、真言ナウマク・サマンダボダナン・アビラウンケン、金剛界曼陀羅では種子バン、真言オン・バサラダト・バン。

阿弥陀如来(あみだにょらい)

西方浄土の教主であり、曼陀羅では西に配置されます。無量寿如来とも。浄土宗・浄土真宗のご本尊でもあります。まだ菩薩として修行中の時に48の大願を立て、その中に「全ての人が救済されるまで自分は仏にならない」と誓いました。そのため、この如来に「南無阿弥陀仏」(阿弥陀さまに帰依します)と祈ると、誰でも救われるとされます。左に観音菩薩、右に勢至菩薩を脇侍として伴います。種子キリーク、真言オン・アミリタテイゼイ・カラ・ウン。

薬師如来(やくしにょらい)

東方浄瑠璃世界の教主です。阿弥陀如来が来世で人を救うのに対して現世で利益を与えてくれる存在として古くはかなり信仰されていました。人が重い病に倒れた時に薬師如来の経を49回読み、49の灯りを灯し、49の五色の彩幡を作ると助かるとされます。左に日光菩薩、右に日光菩薩を伴い、宮毘羅大将(ぐびらたいしょう−こんぴらさま)を筆頭とする12神将に取り囲まれています。種子ベイ。真言オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ。

釈迦如来(しゃかにょらい)

仏教の創始者である釈迦ことゴーダマ・シッダルタその人です。山での苦行の後、菩提樹の下で坐禅をして悟りを開きました。舎利子・阿難陀など多くの弟子に恵まれ、その教えは急速に人々の間に広がりました。釈迦如来は左に文殊菩薩、右に普賢菩薩を脇侍として伴います。種子バク。真言ナウマク・サマンダボダナン・バク。

文殊菩薩(もんじゅぼさつ)

悟りの智恵を象徴する菩薩。「高知県」の語源です。「3人よれば文殊の智恵」の文殊さま。高速増殖炉「もんじゅ」は文殊菩薩のような智恵により、この荒れ狂う核エネルギーを制御したい、という願いを込めて命名されたものです。獅子に乗った姿で描かれます。種子マン。真言オン・アラハシャ・ノウ。

普賢菩薩(ふげんぼさつ)

修行や悟りを象徴する菩薩。また文殊菩薩とともに諸菩薩の筆頭とされます。延命菩薩の別名もあり、寿命を長くしてくれる存在とされます。新型転換炉「ふげん」は普賢菩薩の修行の心で、この核エネルギーの扱い方をよく知りたいという願いが込められています。白い象に乗った姿で描かれます。種子アン。真言オン・サンマヤ・ザトバン。

観音菩薩(かんのんぼさつ)

観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)・観自在菩薩(かんじざいぼさつ)とも。南方の補陀落(ふだらく)浄土に住むとされます。色々な人に教えを説くには、それぞれの人に適した姿に変身すべきであるとして、六観音・三十三観音・百観音など多くの姿に変身します。日本では地蔵菩薩・不動明王とともに最も深く信仰された仏です。聖観音は種子サ、真言オン・アロリキャ・ソワカ。千手観音は種子キリーク、真言オン・バサラ・タ・ラマ・キリーク・ソワカ。

勢至菩薩(せいしぼさつ)

智恵の光で全ての人を照らし、人々に仏の力が働いていることを教えてあげる存在です。この菩薩が行った場所では全ての悪道がなりを潜めるということから勢至の名前があります。種子サク。真言オン・サンザンザン・サク・ソワカ。

地蔵菩薩(じぞうぼさつ)

「おじぞうさま」です。六道(天道・人道・阿修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)の全てに赴き、全ての人々を救うとされます。お釈迦様が亡くなってから、56億7千万年後に弥勒菩薩が出現するまでの間、この世の救済を任されています。種子カ。真言オン・カカカビ・サンマ・エイ・ソワカ。

虚空蔵菩薩(こくぞうぼさつ)

地蔵が「地」を管理するのに対して、「空」を管理する対の存在の菩薩です。虚空蔵菩薩は天なる父、地蔵菩薩は地なる母ともいうことができます。(地蔵菩薩は女性神だと思います)種子タラーク。真言オン・バザラ・アラタンノウ・オン・タラク・ソワカ、あるいはナウボウ・アキャシャギャラバヤ・オン・アリキャ・マリボリ・ソワカ。この真言を毎日100万回、100日間唱え続ければ飛躍的に記憶力が増大するとされます。

弥勒菩薩(みろくぼさつ)

釈迦入滅の567,000万年後に兜卒天(とそつてん)に出現し、全ての人々を救うとされる未来世界の教主です。インドではマイトレーヤと呼びます。中東ではミトラと呼ばれ、ローマ帝国もキリスト教を国教とする以前はミトラ教が国教でした。キリスト教の「最後の審判」の思想はここから来ており、日本に仏教が伝わった頃朝鮮半島で盛んに信仰されていました。京都広隆寺の弥勒菩薩・半跏思惟像はその女性的でなまめかしい姿が有名です。種子ユ。真言オン・マイタレイヤ・ソワカ。

不動明王(ふどうみょうおう)

明王とは悪しき存在を退け、呪力によって闇を明に転じる働きをする者です。この明王グループは最も密教らしい仏たちということができるでしょう。不動明王はそういった明王グループの中心的存在であり、病気治癒などで民間でも最も信仰されている明王です。剣を持ち火焔を背にして、矜羯羅(こんから)童子・制咤迦(せいたか)童子を従えています。種子カーン。真言ナウマク・サマンダ・バザラ・ダンカン。

降三世明王(ごうさんぜみょうおう)

過去・現在・未来の三世における悪を排除する強力な明王です。その勢いは凄まじく、一般にシヴァ神とその妃のシャクティを踏みつけている姿で描かれます。種子ウーン、真言オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・パッタ。

軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)

人のクンダリーニ(体内を足元から頭まで螺旋を描いて昇るエネルギー)の働きを象徴する明王です。吉利吉利(きりきり)明王、大咲(だいき)明王ともいいます。種子ウン、真言オン・アミリテイ・ウン・パッタ。

大威徳明王(だいいとくみょうおう)

六面六臂六足の姿のため、六足明王とも言われます。明王グループには多面多臂のものが多くありますが、足まで多数あるのは珍しい存在です。インドではヤマンタカ(ヤマ−閻魔大王−に対抗する者)と呼ばれ、人の死を制御する力があるとされます。種子キリーク。真言オン・シュチリ・キャラロハ・ウンケン・ソワカ。

大元帥明王(だいげんすいみょうおう)

明王軍団の統率者とされ、明王の中でも最も恐ろしい姿をしているとされる戦いの神。旧日本軍の長を元帥と呼んだのはこの明王にちなんだものです。種子ア。真言タリツ・タボリツ・パラボリツ・シャヤンメイ・シャヤンメイ・タララサンタン・ラエンビ・ソワカ。

無能勝明王(むのうしょうみょうおう)

誰もこの明王には勝つことができないとされる最強の力を持つ明王。男性尊と女性尊があり、女性尊は歓喜天(ガネーシャ)を踏みつけています。真言はしばしば薬師如来の真言オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカで代用します。

烏枢瑟摩明王(うすさまみょうおう)

火の神様で、不浄を消去する力があるとされますので、しばしばトイレにこの明王のお札が張られています。またこの明王に祈って胎児の性別を転換させる秘法が知られています。種子ウーン。真言オン・シュリマリママリ・マリシュシュリ・ソワカ。

愛染明王(あいぜんみょうおう)

弓矢を持った愛の神であり、西洋のキューピッドと同一起源です。種子ウーン。真言オン・マカラギャ・バゾロ・ウシュニシャ・バザラ・サトバ・ジャクウン・バンコク。この真言を30万回唱えると、必ず意中の人から愛されるようになるとされます。

孔雀明王(くじゃくみょうおう)

孔雀が蛇を食べるとされることから、毒を取り除き、災難を避ける力があるとされます。この明王の真言を唱えることにより、空を飛ぶこともできるとされます。明王の中では珍しい、美しい女性神です。インド名のマハーマーユーリーもよく知られています。種子バン。真言オン・マユラ・キランデイ・ソワカ。

その他の明王

そのほか、金剛夜叉明王、歩擲(ぶちゃく)明王、大輪明王、馬頭明王、六字明王、大可畏明王、青棒明王、大力明王、転法輪明王などなどがあります。金剛夜叉明王は不動・降三世・軍荼利・大威徳とあわせて五大明王と呼ばれています。また、降三世・大威徳・軍荼利・大輪・馬頭・無能勝・不動・歩擲を八大明王といいます。

大黒天(だいこくてん)

「天」と呼ばれる仏たちは仏教の守護神たちです。一般にはインドの神様や悪鬼を起源としています。大黒天は日本では大国主命(おおくにぬしのみこと)と習合されて「だいこくさま」と呼ばれ、七福神の一つとされています。元々はインドの三主神の一人シヴァ神の夜の姿マハーカーラで、祈願する者の血肉と引き替えに妙薬を授ける恐怖の神です。それがいつしか戦いの神あるいは厨房の神とされ、日本ではすっかり福の神に変身しました。種子マ。真言オン・マカキャラヤ・ソワカ。なお、妃は大黒天女(だいこくてんにょ)と呼ばれます。これはインドで最も凶暴な神であり民衆に人気のある神カーリーです。

帝釈天(たいしゃくてん)

インドの古い時代の主神インドラです。仏教では刀利天(とうりてん)の主宰者とされ、四天王(以下に示す)の指揮をしているとされます。現代日本ではフーテンの寅さんで有名ですね。種子イー。真言ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ。

毘沙門天(びしゃもんてん)

宇宙の創造神プラジャパティの孫で光の神(闇の神との説も)、幸福の神。水精宮に住み、四天王の一人として北方を守護します。四天王としての時は多聞天(たもんてん)と呼ばれます。古来から武神として崇拝され、特に上杉謙信はこれを深く信仰して毘沙門天の「毘」の文字を旗印として使用していました。種子ベイ。真言ナウマク・サマンダ・ボダナン・ベイシラマンダヤ・ソワカ。

持国天(じこくてん)

四天王のひとつで東方を守護します。種子ヂリ。真言オン・ヂリ・タラシュタラ・ララハラ・バ・タナウ・ソワカ。

増長天(ぞうちょうてん)

四天王のひとつで南方を守護します。種子ビ。真言オン・ビ・ロ・ダ・キャヤ・キシャヂ・ハタエイ・ソワカ。

広目天(こうもくてん)

四天王のひとつで西方を守護します。種子ビ。真言オン・ビ・ロ・ハ・キシャナウ・ギャヂ・ハタエイ・ソワカ。

吉祥天(きっしょうてん)

毘沙門天の妃とされ、幸福の神。インドではラクシュミーと呼ばれ姉のアラクシュミー(不幸の神)と対の存在で、有名な「カーマスートラ」のカーマ(愛の神)の母です。仏教では鬼子母神の娘ともいわれます。東京の吉祥寺の町は、東京都文京区の吉祥天を祭る吉祥寺の門前町が移転してできた町です。古くは七福神の一人に数えられたこともありました。種子シリー。真言オン・マカシリエイ・ソワカ。

摩利支天(まりしてん)

戦いの女神。ギリシャ神話のアテナのような威勢のいい神様です。戦いの神ということで男装した姿で描かれることもしばしばあります。本来は陽炎の象徴で、摩利支天の真言を唱えると悪鬼の前から姿を隠すことができるとされます。種子マ。真言オン・マリシエイ・ソワカ。

荼吉尼天(だきにてん)

本来は人間の肝を食べる夜叉でしたが、仏に諭されて、もう余命の残っていない人の肝だけを食べるようになりました。そのため、人間の寿命を見分ける力を与えられています。日本では稲荷の神と同一視され、「おいなりさま」として祭られているケースが多々あります。種子カン。真言ナウマク・サマンダ・ボダナン・キリカ・ソワカ。

歓喜天(かんきてん)

ガネーシャです。聖天(しょうてん)とも呼ばれます。象の頭をした神で、その姿が庶民に人気あります。シヴァとその妃パールヴァティの間の息子で、ガナバチ、ビナヤカなどの名前もあります。単独の像のほか、猪頭の十一面観音と抱き合っている像もよく描かれます。男女和合・財産集結の神として崇拝されています。種子ギャクギャク。真言オン・キリーク・ギャク・ウン・ソワカ。

閻魔天(えんまてん)

地獄の裁判官で一般に「えんまさま」と呼ばれています。インドではヤマといい、世界で最初に生まれた人間で、そのため最初に死んだ人間となり、最初に地獄に行った人間なので、地獄の主宰者となりました。日本では中国の影響で道教の道士の服を着た姿で描かれます。日本では死んだ人間は閻魔様の前に連れていかれ、そこで生きていた間の罪を裁かれ、その罪に応じた地獄に落とされて、一定期間修行をしてから極楽に迎えられるとされます。この期間は落とされた場所によって異なり、最も深い所にある無間地獄(むげんじごく)に落とされると26億年も修行しなければなりません。種子エン。真言オン・ヤマラジャ・ウグラビリャ・アガッシャ・ソワカ。

自在天(じざいてん)

シヴァ神です。大自在天ともいいます。インドではシヴァ・ヴィシュヌ・ブラフマーを三主神としており、ブラフマーが宇宙を創造し、ヴィシュヌが維持して、シヴァが破壊するとされます。種子マ。真言オン・マケイシラバヤ・ソワカ。

梵天(ぼんてん)

インドの三主神の一人ブラフマーです。仏教説話では釈迦が生まれた時、悟りを開いた時に大きな役割を果たしています。種子ボラ。真言ナウマク・サマンダ・ボダナン・ボラカンマネイ・ソワカ。

韋駄天(いだてん)

「韋駄天のように足が速い」といわれるあの韋駄天です。増長天の八大将軍の一人で、足が速いことで知られます。インドではスカンダといい、火の神アグニと火中に供え物を献じる神スヴァーハーとの息子とされます。なお「スヴァーハー」は日本では普通「そわか」と発音され、各種の呪文の最後に付けられる言葉となっています。

弁才天/弁財天(べんざいてん)

天部の神たちの中で、大黒天と並んで日本で最も崇拝されている神です。ブラフマー(梵天)の娘であり妻であるサラスヴァティで、インドではビーナを持った姿で描かれますが、このビーナが日本では琵琶に変身しています。水の神・学芸の神で元々は弁才天と書きましたが、中世頃からは財産を与えてくれる神・商売繁盛の神として弁財天という書き方もされるようになりました。水の神であることから日本では市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)と習合されて信仰されています。種子ソ。真言オン・サラヴァスティエイ・ソワカ。

その他の天

地天(プルチビー)、水天(ヴァルナ)、火天(アグニ)、風天(ヴァーユ)、日天(アジチャ)、月天(カンドラ)、羅刹天(ナイルリティ)、伎芸天、伊舎那天(イシャーナ)、などがあります。

その他の仏

鬼子母神、地獄の十王、八大龍王、蔵王権現、牛頭天王、青面金剛、薬師如来の十二神将、千手観音の二十八部衆、天竜八部衆、仁王、多数の童子・使者などがあります。

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