タロットの歴史

生まれは近世初頭のイタリア

Cary-Yale Visconti
Cary-Yale Visconti Tarot
タロットは14世紀後半頃に当時のヨーロッパの中心地である北イタリア近辺で生まれたと考えられます。現在残っている最も古いタロットは1428年にミラノのビスコンチ家の令嬢の結婚式の記念に制作されたタロットで「Cary-Yale版ビスコンチ・タロット」の名前で復刻版がUSGames社から販売されています。作者はBonifacio Bembo(1410頃-1478頃)という画家と推定されており、彼はこのビスコンチ家およびその後継となった親族のスフォルザ家のために、多数のタロットを制作しそれが全て「ビスコンチ・スフォルザ・タロット(Visconti Sforza Tarocchi Deck)」と呼ばれているのです。復刻版を見ても荘厳な感じですが、元々は手描きのカードですので豪華なものであったのでしょう。

マルセイユ版

Camoin Tarot
Camoin Tarot
タロットはその後各地に普及していきますが、特に16〜18世紀頃に広く使用された図柄の系統に「マルセイユ版」と呼ばれるものがあります。現在のタロットの最も太い源流となったものですが、特にマルセイユ近辺に版元が多かったため、この名前があります。実際の版元はパリ、スイスなどにも多数分布していました。マルセイユ版については日本でもここ10年ほど研究者が急増しており、大沼忠広氏の尽力により復刻されたカモワン版はその美しい姿を見せています。
Tarot de Marseille
Tarot de Marseille
マルセイユ版の特徴は(上記カモワン版のような一部を除いて)粗末な印刷で、あまり印刷技術の高くない版元が多かったということで、安価であるため庶民の娯楽として気軽に使える品物として愛されていました。トランプは16世紀頃にここから枝分かれしたもので、地域によって様々な形式がありましたが、日本にはポルトガル版が戦国時代末期に輸入され、天正カルタと呼ばれて江戸時代に広く愛されました。「ピンからキリまで」という言葉は、天正カルタのA(1)からK(王)までという意味です。花札もこれのバリエーションのひとつで12月が「桐」なのは天正カルタのKをキリと呼んでいたからです。トランプについては明治以降に今度はアメリカ版が輸入され、現在の日本のトランプにつながっています。

魔術師たちのタロット

Rider Waite
Rider Waite
Crowley Thoth
Crowley Thoth
18世紀になってヨーロッパにオカルトブームが起きると、このタロットをオカルト的なものと結びつけて考える人たちが現れました。実はタロットが占いに使用されるようになったのはこの時代からです。ジェブラン(1725-1784)、レビ(1810-1875)などといった先駆者の研究もありますが、なんといっても深い研究をしたのは1888年にマグレガー・メイザース(1854-1918)らにより設立されたイギリスのゴールデン・ドーン(黄金の暁)という魔術結社です。

彼らはタロットを占星術やユダヤの神秘思想「カバラ」と関連づけて研究しますが、その活動の中から幾つかの俊逸なタロットが生まれます。代表がアーサー・エドワード・ウェイト(1857-1942)の指導のもとでパメラ・コールマン・スミス(1878-1951)が描いた“ライダー版”と、アレイスター・クロウリー(1875-1947)の指導のもとでレディ・フリーダ・ハリス(1877-1962)が描いた“トートのタロット”でしょう。

ライダー版(最初ライダー社から出版されたのでこの名前がある)は大アルカナの8(正義)と11(力)を入れ替えるという大胆な試行をしました。このため、現在でもライダーに影響を受けて、この2つを入れ替えたタロットが多数制作されています。

現代のタロット

現在ではタロットは占い用・ゲーム用・コレクション用と様々な用途で使われ、また毎年多数のタロットが世界中で生み出されています。コレクターの中にはひとりで数百個・数千個も持っているような人もいます。現代のタロットの中には、オカルトに興味のある人が制作した秘儀的なもの、魔女グループが制作した魔女術的なもの、女性の占い師向けに制作されたフェミニズム系、腕に覚えのあるイラストレーターや画家が描いたデザイン系、野球やロボットなど特定のテーマで制作したテーマ系、漫画家などが制作したキャラクターもの、など様々なデッキがあり、コレクターの心をくすぐっています。

1990年代まではそういったタロットを入手するのは、特に地方在住者にはとても大変だったのですが、現在ではAmazonでかなりの数のタロットを購入できることと、Yahoo!のオークションを注意しているとけっこうレアもののタロットを見かけることもあるため、コレクターにとっては、とても嬉しい環境が整いつつあります。
アリスのタロット
クリムトのタロット
007のタロット

タロットかタローか

Tarotという単語は、多くの言語(フランス語や英語も含む)で「タロー」と発音します。ところが日本では以前から「タロット」と読む流儀が定着しており、一時期は「タロットかタローか」という、論争まで起きていました。今日では、多くのタロット占い師は、外国ではタローと呼ぶことは知ってはいるものの、日本国内で、特にこの占いに必ずしも詳しくない人たちの間では「タロット」という呼び方が定着していることを尊重し、敢えて「タロット」という呼び方を許容している状態です。そのため占いフォーラムでも概ね「タロット」という呼び方が使用されていました。


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