フィギュアスケート

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★今日の特集 ウィンタースポーツの世界(12)スケート-4

フィギュアスケートというのは、元々は先日説明した「ダッチロール」から 出発したものです。ダッチロールでは弧線を描きながら氷上を滑るのですが 19世紀半ばころ、このように氷上に色々な図形を描く遊びが流行り始めます。
そこで、そういう「図形(figure)を描く競技」として、フィギュアスケート は生まれました。

フィギュアスケートの演技種目として以前行われていた「コンパルソリー」と いうのは、この規定図形に正確に沿って氷上を滑る技術を競っていました。
この図形は3つ作られ、それぞれを右足・左足できちんと滑られたら3×2で 6点になります。後にフリー演技が追加された時も、この「6点満点」という のが踏襲されたため、現在でもフィギュアスケートは10点ではなく6点が満点 になっています。

このコンパルソリーが廃止されて代わりにショートプログラムになってしまっ たのは、コンパルソリーが「単調でTV映りが悪い」からです。そのため現在 では、情緒性の高い美しいスケーティングができる選手の採点が以前よりは 良くなるようになっています。

そのフリースケーティングの元祖といわれるのはジャクソン・ヘインズです。
ヘインズは元々バレエの人で、バレエのポーズをスケートに取り入れると共に ウィンナワルツを流しながらスケーティングするということを思いつきました。
現在ではフィギュアスケートに音楽は不可欠の要素になっていますが、最初か ら音楽がそこにあった訳ではありません。ヘインズはシット・スピンの考案者 でもあります。

★今日の特集 ウィンタースポーツの世界(13)スケート-5

フィギュアスケートの構成要素は、スケーティング、ステップ、スピン、 ジャンプです。ショートプログラムの場合は、女子・男子それぞれでどの ような要素を入れなければならないのかというのが定まっており、それを 取り入れた演技を行う必要があります。ここで一度失敗した演技をやり直し たり、同じものを2度入れることはできません。

そういった要素の中でも特に派手で近年多くの選手が力を入れているのが ジャンプですが、これは長くなるので次回説明することにして、今回は スピンに注目してみましょう。

ジャンプは派手ですが使いすぎると「体操」の世界になってしまい「舞踏」 の世界からは離れていきます。情緒を表現するのには美しいスケーティング、 華麗なステップ、そしてキメのスピンも重要です。

スケートのブレードの底はv−vのような形をしています(幅は3〜4mm)。
歯の両側にエッジが付いており、通常スケーティングはこのどちらかのエッジ に乗って滑っています。このエッジの内、足の内側をインサイド、外側をアウト サイドといいます。スピンの場合もこのどちらかのエッジに乗って氷上に小さな 円を描いて回転しています。

スピンにも色々な種類があります。簡単に解説してみましょう。

スタンドスピン 立ったまま回転するスピンで、バレエのピルエットに相当      すると考えても良いでしょうか。最初はフリーの足を斜めに少し      上げて回り出し、回転が安定すると軽く内側に曲げます。

シットスピン 座って回転し始めるスピンです。前述のようにジャクソン・      ヘインズが考案したものです。入り方はスタンドスピンと似てい      ますがフリーレッグを上に上げ始める時に同時に腰を落とし、その      まま回転を始めます。最後は両手を広げながら立ち上がって回転を      終えます。演技のラストにもよく使われますね。

クロスフットスピン フリーレッグを軸足に交差させて回転するスタンド      スピンで、高速回転になるのが売りです。

キャメルスピン バレエのアラベスクのようにフリーレッグを後ろにまっすぐ      伸ばした状態で回るスピンです。体がT字型に見えます。体のバラ      ンスが要求されるスピンです。

レイバックスピン 後ろに反り返って回転するスピンです。スタンドスピンの      変形ですが、きれいに反るとなかなか美しいものです。女子のショ      ートプログラムではエレメンツに入っています。

フライングスピン 跳んだ状態から着氷と同時に回転するもの。フライング・      シット、フライング・キャメルなどが行われます。男女のショート      プログラムのエレメンツに入っています。

ビールマン・スピン フリーレッグをまっすぐ後方の頭の上まで上げ、それを      両手で押さえたまま、チューリップのような姿勢で回転するスピン      です。最高に柔軟な体が要求されますので本当にきれいに決められ      る選手はそう多くありません。デニス・ビールマンが考案しました。

キャンデロロスピン あぐらをかいた状態で回るもので、名前の通りフィリップ・      キャンデロロが考案したのですが、現在は禁止ワザ。

★今日の特集 ウィンタースポーツの世界(14)スケート-6

さてフィギュアスケートのジャンプですが、現在次の7種類が基本的なもの として整理されています。

 スリー・ループ・トゥループ・サルコウ・フリップ・ルッツ・アクセル

まずは簡単な説明をしますが、その前に全てのジャンプは後ろ向きに着氷す るということを押さえておきましょう。フィギュアスケートのブレードは 先にも説明したように、前面にはトゥピックが付いていますので、前向きに 着氷しようとすれば、これがひっかかって転んでしまいます。ですから、 必ず後ろ向きに着氷する以外無い訳です。

 スリー 基本のジャンプで、フィギュアスケートの学習者が最初に覚える      ジャンプです。ワルツ・ジャンプとも。左回転の円を描きながら      踏み切る。左足のアウトエッジで滑りながら右足は後ろにやって      おき、このフリーレッグを前に放り投げる感覚で踏み切って、      空中で、そのまま円を描いている方向(左回転)に半回転して、      右足のアウトエッジで着氷し、そのまま円を描き続けます。

 サルコウ スウェーデンのウルリッヒ・サルコウ(Ulrich Salchow,1877-1949)      が考案しました。1908年のロンドン五輪の優勝者です。
     左回転のターンを掛けて左足のインサイドで後ろ向きに滑る状態に      なり、そこから更に右足を曲げ、ももを内側に持ち上げる要領で      踏み切ります。そして空中で左に1回転して、空中で体重移動。
     右足のアウトエッジで着氷します。

 ループ これは踏み切りと着氷が同じ足になります。左回転のターンをかけて      右足のアウトで後ろ向きに滑る状態になります。この時に右手は体の      後ろに引き、左足は前に出してスケーティングしている右足を曲げます。
     右手を左へ回して体を左にひねるのと同時に右足で踏み切ります。
     空中では足は伸ばしたまま交差した状態。腕は胸のところ。左に      1回転してそのまま右足アウトエッジで着氷します。

 トゥループ 「トゥループ(toe loop)」という名前は踏み切りにフリーレッグ      のトゥを使用して、両足で跳ぶからです。右足アウトエッジで滑る      状態で、左足は後ろに出しておきます。左手は前、右手は後ろ。
     そこから左足のトゥを氷に置いて両足でジャンプ。左に1回転して      右足アウトエッジで着氷です。

 フリップ これは要するに「トゥ・サルコウ」です。つまりサルコウの応用      で踏み切りの際に右足のトゥを使用して両足踏み切りになります。
     着氷は右足のアウトエッジ。両手の使い方はトゥループと同様です。

     普通のサルコウですと、右足を自然に回転する方向に回しますが、      フリップの場合踏み切りに使うために一度後ろへやらねばならず、      この時からだが右回転ぎみになります。そこから左回転のジャンプ      をするため、トゥループよりも難易度が上がります。

 ルッツ ある意味では一番難しいジャンプです。難易度の高いジャンプとして      は次項のアクセルが有名なのですが、それは回転数が半回転多いから      であって、飛び方自体としてはルッツが一番困難です。
     アロイス・ルッツ(Alois Lutz,1898-1918)が考案しました。

     助走はかなり長時間取ります。左足アウトエッジで滑りながら右足を      少しずつ後ろに持っていきます。右手も後ろに持っていきます。顔と      上半身も右向きです。そこから右足トゥを付いて両足で踏み切り、      その瞬間、右手も顔も上半身も左にひねります。そして空中で1回転      して右足アウトエッジで着氷します。
     
     滑走距離が長くなるため、トリプルで跳ぶときにはリンクを対角線に      端から端までいっぱいに使う感じになります。

 アクセル アクセル・パウルゼン(Axel Paulsen,1855-1938)が考案したもの      ですが、彼はフィギュアスケートの人ではなくスピードスケートの      人です。このジャンプも彼はスピードスケート用の歯の長い靴で      やってみせていたらしいです。
     
     後ろ向きに右アウトエッジで滑ってきて、左に半回転して前向きに      なり左のアウトエッジに切り替えます。左足は少し曲げています。
     この回転の際に右足と右手はそのまま後方に残します。その右手と      右足を左に回転させ、右足はももを引き上げる感じで左足で踏み切り      ます。空中では回転速度を上げるために腕は胸の所におき(ループ      の空中姿勢に同じ)、顔も回転方向に向けます。1回転半しながら      体重は空中で右足に移動させ、その足で後ろ向きに着氷します。

以上を一覧表にすると次のようになります。

エッジ一覧(L左足/R右足 F前面/B後面 Iインサイド/アウトサイド)        踏み切り    着氷  スリー   LFO     RBO three jump(waltz jump)  サルコウ  LBI     RBO salchow jump  ループ   RBO     RBO loop jump  トゥループ RBO+Lトゥ RBO toe loop jump  フリップ  LBI+Rトゥ RBO flip (toe salchow) jump  ルッツ   LBO+Rトゥ RBO lutz jump  アクセル  LFO     RBO axel jump

ここでフリップとルッツは踏み切りの際に、左足のインエッジかアウトエッジ かが違うだけという見方も可能であることが分かります。そこで、ルッツの ように見せて、踏み切りの直前にエッジをアウトからインに変える飛び方が あります。これは本来のルッツよりずっと簡単になり、俗に「フルッツ(flutz)」 と呼ばれています。アイスショーなどではわざとやるケースもあるかも知れま せんが、よくあるのは、ルッツを跳ぼうとしたつもりが失敗してこのフルッツ になってしまっている例です。

★今日の特集 ウィンタースポーツの世界(15)スケート-7

さて、ジャンプといえば、フィギュアスケートをほとんど知らない人でも 伊藤みどりのトリプルアクセルは聞いたことがあるのではないかと思います。
昨日版で書きましたように、アクセルというのは前向きに踏み切り後ろ向きに 着氷するので1回転半のジャンプなのですが、1回余分に回れば2回転半の ダブルアクセル、2回余分に回れば3回転半のトリプルアクセルになります。
2回転半、3回転半を跳ぶには、回転速度を上げることと、滞空時間を長く するために高く跳ぶことが必要です。どちらも筋力を使うことですので、 女子でトリプルアクセルを跳ぶことは大変なわけです。

女子選手でオリンピックでトリプルアクセルを成功させたのは伊藤みどりだけ ですが、今回のオリンピックで恩田美栄(伊藤と同じ山田コーチに付いている) がこれに挑戦するかも知れないとのことです。無理はして欲しくないですが、 調子が良さそうだったら積極的にやってみて欲しいものです。

大舞台でなければ、エキシビッションでボナリーがキャンデロロとのペアで 出場した時にパラレル・バックフリップ+パラレル・トリプルアクセルという とんでもないことをやってくれたことがあります。これは凄い歓声でした。
ボナリーは4回転のトゥループやサルコウには挑戦しているようですが、 アクセルは不得意?なのか本番での挑戦例はあまり無かったかも知れません。

「あの事件」のせいで現在はかなり悲惨な暮らしをしているらしいトーニャ・ ハーディングもアメリカ選手権ではトリプル・アクセルを成功させています。
しかしボナリーやハーディングが男子にも負けないようなしっかりした体つき であるのに対して、小柄な伊藤みどりがこの大技を決めることができたという のは本当にすごいことだと思います。

バックフリップ(宙返り)はエキシビッションでは見ることができますが、正規 の競技会では禁止されています。理由は元々のフィギュアスケートのコンパル ソリーの動きの中に「縦方向の回転」が存在しないからです。スルヤ・ボナリー が長野五輪でやったのは印象的でした。これは黒人だからといって採点がいつも 低くされていてるという長年の不満があった所で、年齢的に恐らく最後の五輪。
それで前半の演技で失敗してしまい、まさにヤケになってやったという感じで した。当然採点は大減点でしたが、バックフリップが禁止ということを知らない 観客から、どうしてこんなに点数が低いのか、と大ブーイングが起こりました。
実況のアナウンサーも「これはいけませんね。最後まで投げずにやって欲しか ったですが」と言っていましたが、私もそう思いました。わざわざ禁止ワザを やった訳ですから、失格にされても文句が言えない所でした。

バックフリップが禁止されているもうひとつの理由は「危険なのでは」という ことです。危険ということでは女子のトリプルアクセルは禁止すべきだといっ た意見が出たこともあります。幸い禁止されるには至らず、おかげで伊藤みどり はこのワザをアピールできたのですが、女子で今後トリプルアクセルを跳ぶ人 がどんどん出てくれば、禁止議論はもう出てこないでしょう。女子で(シングル) アクセルを最初に跳んだのは1912年世界選手権でのドロシー・スミスですが、 彼女はこのワザが「女子選手らしからぬ技」と言われて減点されてしまいました。
いつの時代にも保守的なお偉方がいるものです。現在では女子のショートプログ ラムで、ダブルアクセルがエレメントに入れられています。

なお、ダブル、トリプルという言い方は他のジャンプでもいいます。ルッツや トゥループを2回転・3回転させれば、ダブルルッツ、トリプルトゥループ、 などと呼ばれます。各々の初成功の年代を書いておきます。男子/女子の順に 並べます。(年代不明のものも多い)

【アクセル】
Single Axel 1882 Axel Paulsen(Norway) Vienna World Contest Double Axel 1948 Dick Button (USA) St.Moritz Olympic Triple Axel 1978のVern Taylor(Canada) World Championship (1960 David Jenkins(USA) World Championshipとの説も)

Single Axel 1912 Dorothy Smith(UK) World Championship Double Axel 1953 Carol Heiss(USA) (1952 Tenley Albright(USA) Oslo Olympicとの説も) Triple Axel 1989 Midori Ito(Japan) Japan Championship

【ルッツ】
Single Lutz 1913 Alois Lutz(Austria) Double Lutz ???? Triple Lutz 1962 Donald Jackson(Canada) World Championship

Double Lutz 1942 Barbara Scott(Canada) Triple Lutz 1978 Denise Biellman(Swiss) World Championship

【フリップ】(mapes) Single Flip 1920年代 Bruce Mapes

【トゥループ】(cherry flip) Triple ToeLoop 1964 Thomas Litz(USA) World Championship Quadruple Toeloop 1988 Kurt Browning(Canada) World Championship

Quadruple ToeLoop 1991 Surya Bonaly(France)

【ループ】(rittberger) Single Loop 1910 Werner Rittberger(German) Double Loop ???? Triple Loop 1952 Richard Button(USA) Oslo Olympic

【サルコウ】
Single Salchow 1909 Ulrich Salchow(Sweden) Double Salchow ???? Triple Salchow 1955 Ronald Robertson(USA) World Championship Quadruple Salchow 1998 Timothy Goebel(USA) Junior Series

Single Salchow 1920 Theresa Weld (USA) Antwerp Olympic Double Salchow 1937 Cecelia Colledge(UK) World Championship?? Triple Salchow 1962 Petra Burka(Canada) Canada Chapionship


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