去勢

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■去勢
性腺の除去

去勢(castration)とは、性腺(男性は睾丸・女性は卵巣)を除去することである。

基本的には外科手術によって除去するが、薬物の投与により機能をつぶして、化学的に去勢する方法もある。

去勢は最初動物(家畜)に対しておこなわれたものと思われる。雄の動物を去勢すると一般に性質がおとなしくなり、結果的にやわらかい肉が得られる。現代日本では、牛は雄の場合生後数ヶ月で種牛にするか肉牛にするかが決定され、肉牛になることが決まると即去勢される。

その後、去勢は戦争で獲得した捕虜に対する虐待行為としておこなわれるようになった。しかしその後、一部の地域では「宦官」のような制度が生まれ、自ら去勢する者も多く生まれた。

現代では人間の去勢は、性腺付近にできた腫瘍に対する治療などを目的とする医学治療的な目的でおこなわれることもあるが、むしろ性転換のためにおこなわれるケースが多いと思われる。

宦官

宦官(かんがん,eunuch)は世界的に見られた風習である。むしろこの風習が無かった国の方が少ないという説もあり、日本はその数少ない国のひとつということになるらしい。

宦官は主として王宮の雑務、特に後宮の管理要員として使用されていた。初期の頃は戦争捕虜を当てていたが、王族に近いところに仕えることができることから、中国などでは自ら去勢して宦官となる者も多かった。

アラビアン・ナイトには、奴隷を買って去勢した上で宦官として高く転売する、という話が出てくる。去勢済みの奴隷は高値が付いたのであろう。

宦官の手術は初期の頃は陰茎・陰嚢を刃物で切除したあと、熱い砂の中に埋めたり、油を塗って止血をしていたようである。昔は死亡率が50%ほどあったともいう。これが19世紀の中国などでは事故確率は恐らく2〜3%くらいまで小さくなっていたものと思われる。

中国には宦官を志望する人のための専門の手術医が存在した。彼らはナイフを陰部に当てた上で本人に「後悔しないか?」と聞く。そこでちょっとでもためらいの表情を見せたら手術は中止である。本人が「後悔しない」と言えばナイフは動き、一瞬で宦官が誕生した。彼らは尿道が塞がらないように針を尿道に入れられ、血が止まるまで部屋の中を歩き続けるよう命じられたという。

数日後針を抜いて尿が出れば成功である。もし出なかった場合は、苦しみながら死を待つ以外の道は無い。

中国では史記を著した司馬遷、紙の発明者蔡倫など、有能な宦官もいたが、しばしば宦官の専横で国が傾くこともあったようである。

宮刑

司馬遷は自分の意志で去勢した訳ではなく、武帝の怒りを買って宮刑に処されたものである。宮刑はつまり去勢される刑罰であり、死刑の次に重い刑とされた。

女性に対しても宮刑というのはあったらしいが、実際にどういう刑罰が課せられたのかは諸説があって定まらないようである。

カストラート

カストラートは中世ヨーロッパに存在した奇妙な制度である。当時教会が、女性が教会内で歌うことを禁止していたため、合唱隊のソプラノ・パートを受け持つ存在として、変声期前に去勢した少年歌手<カストラート>が生まれた。カストラートは優秀な人は一生きれいなボーイソプラノを保ち続けたという。

歌の上手な少年がいると、そういう世話をする人が親にその子をカストラートにしないか?と打診することになる。それで話がまとまれば、変声期前のだいたい10歳くらいの頃に去勢手術を受けた。

宦官の去勢手術の場合は、後宮で働いても後宮の女性に手を出せないようにするためなので陰茎・睾丸の両方が除去されたが、カストラートの場合は変声期が来るのを止めればいいので、睾丸だけを除去した。

しかし去勢後歌手の道を挫折した者には、男性売春婦になるくらいしか、生活の道が無かったともいう。

現代の去勢

現代において、去勢がおこなわれるもっとも多いケースはやはり性転換のためと思われる。しかしその他のケースもいくつかある。

病気治療のためというのがわずかながらある。前立腺・睾丸・陰茎などに腫瘍が出来たケースである。

その場合、念のため性器を全て除去した上で女性ホルモンの投与をおこなうため、かなり女性化してしまう人もあるとのこと。ただこういう部位に出来た腫瘍は良性のものであればいいが、悪性のもの(癌)であると進行が速く、命に関わるケースが多いらしい。

それからSMの趣味の人が肉体をいじめる趣味が高じてついには睾丸や陰茎を自分や性的パートナーに切断させるケースがある。

また昔からよくあるケースとして、暴力的な夫に対して妻が逆襲して去勢してしまうケースも、新聞沙汰にはなかなかならないが、毎年数件起こっているともいう。



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