性とは何か

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■性とは何か
性とは何か

ある子供が両親に「性ってなぁに?」と聞いた。両親はとうとう来るべき日が来たかと思い、散々苦労してやれ雄しべと雌しべだの何だのと長い長い話をした。すると子供は非常に困惑したような顔をしてこう言った。「そんなに長いこと、このアンケートの『性』って欄には書ききれないよ。」

性と生殖

性は有性生殖に伴って出てくる概念である。すなわち、ひとつの生物の種族に属しながら違った形態を持つメスとオスがあって、それぞれが通常の細胞の半分の染色体しか持たない特殊な「生殖細胞」を出し、これを結合させて新しい個体を発生させる仕組みを有性生殖といい、この時一般に一方の種類の出す生殖細胞は大型であまり動かず、他方の種類の出す生殖細胞は小型でよく動き回る。前者を卵子と呼び後者を精子と呼んで、卵子を出すものをメス、精子を出すものをオスと呼ぶ。

しかし一部の生物にはかなり多くの個体が生殖細胞を生み出さないことがある。ミツバチなどがその例で、ミツバチの中の「働きバチ」は生殖には関わらない。しかしこの働きバチは遺伝子的には明らかにメスと認められる「女王バチ」と同じ染色体を持つのでこれはメスに分類される。実際、女王バチと働きバチは単に育て方だけの問題で形態が変わるのである。

しかし更に一部の生物では性が遺伝子的に固定ではなく変動するものもある。キンギョハナダイは生まれた時は全てメスであるが成長するとオスになってしまう。またスズメダイ科のクマノミは逆にオスに生まれてメスになってしまう。またホンソメワケベラは1夫多妻型のハーレムを形成する魚であるが、このハーレムの中核のオスが死ぬと、ハーレム内のメスの内の一匹がオスに昇格?してハーレムを統率する。またカミナリベラでは生まれながらのオスと生まれた時はメスであるが後にオスに変わるものとがいる。無論メスのままのものもいる。また育った時の栄養状態によってオスに育ったりメスに育ったりする生物もいる。一般には栄養状態のよいものがメスになる。

哺乳動物の性

哺乳動物では性にもうひとつの基準が発生する。すなわち哺乳動物では子供がある程度の大きさになるまで親の体内で育てるため、この体内で育てる側の種類をメスといい、他方をオスと呼ぶ場合が多い。この時、精子と卵子の受精はこのメスの体内で行われ、そのためオスは陰茎(penis)とよばれる棒をメスの体内の膣(vagina)と呼ばれる穴の中に入れて精子を大量に含む精液を射出する。

また哺乳動物ではこの子供を体内で育てたメスがその子供を外に排出(出産という)したあと、しばらく乳(milk)と呼ばれる体液を与えて更に育てる。この乳を出す乳腺の周囲は他と容易に見分けが付く「乳房」というものを形成している。特に霊長類では、その乳房に脂肪がつまっており、美しい半球状のバストを形成する。霊長類の場合、子供がかなり未熟な状態で生まれてきて、産後しばらくメスは子供から目を離せないため、この乳房はオスを魅惑して食糧を取って来させるためにも使用する。

すなわち哺乳動物ではオスは陰茎を持ち、メスは発達した乳房を持つことで外見的に容易にオスとメスを見分けることができる場合が多い。

人間の性

人間の性については近年各種の議論がされているが大田黒和生は人間の性は次の7つの基準で考えるべきであろうと述べている。(「世界文化大百科事典」世界文化社 1971)

  1. 性染色体による性。女はXX、男はXY。
  2. 性腺による性。女は卵巣、男は精巣(睾丸)。
  3. 内性器による性。女は輸卵管・子宮、男は輸精管・前立腺・精嚢。
  4. 外性器による性。女は膣・陰核・陰唇、男は陰茎・陰嚢。
  5. 性ホルモンによる性。女は女性ホルモン、男は男性ホルモン。
  6. 社会心理学的性。
  7. 戸籍上の性。

上記の中で社会心理学的な性のことを従来からの「性(sex)」という概念と区別して「性別(gender)」と呼ぶ習慣が確立してきつつある。また上記1〜5の基準の間に矛盾があるケースを間性(intersex)と医学的に呼んでいる。

大田黒がこの記事を書いた時点ではこの分類がせいいっぱいであったと思われるが現代ではこの「社会心理的性」は「社会的性」と「心理的性」に分けて考える必要がある。それについては次々項を参照のこと。

医学的性基準の混乱

間性には代表的な幾つかの例が知られている。

  1. 性染色体に異常があるもの。
    クラインフェルター症候群
    性染色体がXXYのものである。全体的には男性的だが乳房などは女性的な形態を示す。性器は発育不全。
    ターナー症候群
    性染色体はXO。全体的には女性的だが背が低く性器は発育不全。
    超女性
    性染色体がXXX。外形的には普通の女性とあまり変わらない。精神薄弱が多いという説もあるが、単なる偏見かも知れない。
    超男性
    性染色体がXYY。外形的には普通の男性。犯罪者が多いという説もあるが、単なる偏見かも知れない。
  2. 性染色体は正常なもの
    アンドロゲン不応症(旧名:睾丸女性化症候群)
    外見上は全く女性であり、ごく普通の女性として育ち結婚して不妊治療などで病院を訪れて発覚するケースがほとんどである。遺伝子的には完全に男性であるが、何らかの原因で男性化が働かず人間の体の基本形である女性型のまま生まれそのまま女性として育ったもの。子供が産めないことをのぞけば完全に女性である。
    先天性副腎皮質症候群
    外見はやや曖昧ながら男性的な形態を示す。二次性徴まで男性型の場合もある。
    真性半陰陽
    非常にまれに、精巣と卵巣の両方を有する人がある。外形は様々であるがその中でも更にまれには陰茎と膣の両方を持つ人もある。また片方の性腺が卵巣で片方が精巣というケースもある。

上のアンドロゲン不応症の所でも書いたように基本的に人間の体の基本形は女性の体であって、男性の体というのはそれを男性化因子の作用で改造して作られたものである。陰茎は陰核が肥大化したものであり、睾丸は卵巣が変化して(正確には卵巣・精巣の元になる性腺があり、その内側が発達したものが精巣、外側が発達したものが卵巣である)、外に出たものである。その時に精巣は陰唇を癒着させ、陰嚢を形成する。陰嚢の中央の縫い目は陰唇の癒着の痕である。

成長すると男になる女

近年カリブ海のある島で、何人もの女の子が成長すると男の子になるという現象が発見された。研究の結果、これらの自然に性転換した元女性たちは家系を調べてみると5代ほど前のある一人の女性の子孫であることが分かった。非常に特殊な遺伝子を持っているものと思われる。このように自然に男の子になったという話は40年ほどまえにインドネシアでも報告されているが三面記事の中で終わっており研究したものはいないと思われる。

心理社会的性の混乱

近年最も問題になっているのは心理社会的な性の混乱である。これは下記のように分類できる。

肉体的性 性的対象 自分に対する
性別自認
社会的
性別表示
名称
女性 女性・両性 女性 女性 女性同性愛(レスビアン)
男性 男装者(同性愛型)
男性・非女性 女性 潜在的性逆転(女性同性愛型)
男性 性逆転(女性同性愛型)
男性 女性 女性 通常女性
男性 男装者(単純型)
男性・非女性 女性 潜在的性逆転(男装型)
男性 性逆転(男装型)
男性 女性 女性・非男性 女性 性逆転(女装型)
男性 潜在的性逆転(女装型)
男性 女性 女装者(単純型)
男性 通常男性
男性・両性 女性・非男性 女性 性逆転(男性同性愛型)
男性 潜在的性逆転(男性同性愛型)
男性 女性 女装者(同性愛型)
男性 男性同性愛(ホモ)

上記で「性逆転」は便宜上 transsexual の訳語として使用している。transsexual は通常「性転換」と訳される。transsexual には pre-op の人と post-op の人があるが、日本で一般に「性転換者」というと post-op の人のみを言っている。しかしここで言う「性逆転」とは「自分を異性と自認している」という意味であり、実際に性転換手術を受けた人や性転換手術を受けたいと考えているという意味では無い。

私はこの人たちについて以前「性転換志向者」と呼んでみたのだが、心理的な性が逆転していることと、性転換手術を受けたいと思っていることはまた別である。そこで今回は「性逆転」という言葉を作ってみた。また男装者・女装者のところは以前「男装趣味者」「女装趣味者」と書いたのだが、趣味として女装・男装する人はまた別に考える必要がある。上記ではあくまで通常異性の服を着ている人を問題にする。

なお、上記の表でも、実際にはそれぞれのケースごとに単純には割り切れない場合も多い。また種々の中間型が存在する。

たとえば、女装の男性や性逆転の男性を性的対象とする2次的性逆転、男性女性両方に興味を持つバイセクシュアル、単なる演出として趣味的に女装するドラッグクィーン(「ドラッグ」は「引く」(drag)であり「薬」(drug)ではない)、などなどである。また女装者にも、日常的に女装している人から家庭内でのみ女装する人、週末だけ女装する人、普段は下着のみ女装している人、などなど様々な形態がある。また性転換志向が進んで実際にホルモンや手術などにより肉体にも手を加えている人、そこまで行かなくても永久脱毛などはしている人なども別途取り扱う必要がある。

しかし大雑把な見方をすると、上記のように、基本的に人間の心理的社会的性別の混乱は、異性装志向・同性愛志向・性転換志向という3通りの現れ方があり、これらを総称して「性別不快症候群」と呼ぶ。

これは単なる傾向であって「異常」ではない。従来、これらの人たちを「服装倒錯者」「性的倒錯者」「性的逸脱」などと呼んだ呼び方は全て誤っている。「異常」だとか「倒錯」だとか「逸脱」などと言われることによってこの人たちはずいぶんと余分な精神的苦しみを味わって来たのである。性的な傾向は全て個人的なものであって、他人に迷惑を掛けないかぎり、どのような傾向も許されるはずである。



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