生殖の歴史と分類

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■生殖の歴史と分類
●有性生殖と無性生殖

生殖とは生物が自分と似た個体を作り出す操作一般をいいます。この操作ができない生物は「仲間を増やす」ことができないため、もし自然に発生してもすぐに消滅してしまうと考えられます。ですから、逆にいえば生殖が可能なことが生物というものの大きな特徴ともいえます。(ただし社会を形成するタイプの生物の場合は、敢えて生殖に参加せずに社会に貢献する個体もしばしば見られる)

生物というものが地球に生まれてから最初にできた生殖の仕組みは無性生殖(単性生殖)です。無性生殖にも色々なタイプがありますが、恐らくもっとも原始的なものは、個体が自ら複数に分裂することによって自分のコピーを増やす方法でしょう。分裂によって複製された個体は相互に同じ形質を持ちますが、役割や環境によってその形態や性質を示す場合もあります。

これに対して有性生殖の場合は「同じ種類の」別の個体が分担しあって新しい個体のベースを作ります。この場合、作られた新しい個体(子)はその元となった二つの個体(親)から半分ずつその形質を受け継ぎます。現在の地球上の高等生物のほとんどはこの有性生殖を行っています。なぜこんな面倒なことをするかというと、個体の多様性を確保するためだと言われています。つまり無性生殖では従来存在した個体と同じ素質の個体しか生まれないのに対して、有性生殖ではどんどん新しい素質の個体が生まれるため、生きている環境(特に気候や水の量)が激変した時に、多様性があった方がその中の一部が生き残れる確率が高くなり、その「種」が生きのびていけるからです。そういう意味では生物の種というのは、それ全体でひとつのシステムを持った生き物なのかも知れません。

●無性生殖の分類

無性生殖には次のような種類があります。

・分裂
ひとつの個体がほぼ同じ大きさの2つの個体に分裂して増える物。分裂した直後の個体のサイズは小さいが、その後栄養を摂取する(化学物質や他の生物などを食べる)ことにより、また元の大きさまで成長していきます。
・出芽
ひとつの個体が自分の身体の一部を「芽」として分離し、その芽が栄養を摂取して大きくなってやがて、元の個体と同じようなサイズまで成長するもの。
・胞子
個体が自分の身体にくらべて極端に小さい「胞子」を大量に排出し、そのひとつひとつが栄養を摂取して大きくなり、元の個体と同じサイズのものが再現されるもの。胞子の排出後は元の個体は死ぬタイプもよくある。
●有性生殖の分類

有性生殖は大きく接合型と受精型に分類されます。接合型では生殖を行う両者の個体の「生殖細胞」は区別が付きませんが、受精型では、大型で動きの小さな生殖細胞(卵子)と小型で運動量のある生殖細胞(精子)とが結合して、新個体が生まれます。

この時、卵子を供給する個体をメス(♀)、精子を供給する個体をオス(♂)と言いますが、このオスとメスのあり方にも様々なタイプがあります。

ほ乳類などでは、オスとメスは生まれた時から決まっていてそれが変化することはひじょうに稀ですが、魚類などには成長や必要に応じて性が変わる物はよくあります。これを「性転換」と言っています。

またアオミドロなどの場合、いつでも精子でも卵子でも供給することができ、生殖を行う相手との関係でそのどちらかを提供するようになっています。基本的にはオス役のアオミドロがメス役のアオミドロに接合管を挿入して、雄性細胞を送り込み雌性細胞に結合させます。これは接合型の有性生殖から一歩進化した状態と考えることもできます。高等生物でもミミズなどは元々「雌雄同体」で、精子と卵子のどちらも提供することができ、ある意味では性が固定されている生物よりも多様な子孫の作り方が可能です。

●性が変動する生物

性が変動する生物には、生まれた時にはメスで後にオスに転換するもの(雌性先熟)、逆にオスで生まれてメスに転換するもの(雄性先熟)、また生殖の必要性により転換するもの、栄養状態によって転換するものなどがあります。

クマノミは雄性先熟で、生まれた時がオスで成長するとメスに変わります。逆にキンギョハナダイは雌性先熟で生まれた時はメスで成長するとオスになります。

ホンソメワケベラは、群の中に1頭だけオスがいて、他はメスになっていて、いわゆる「ハーレム」を作っていますが、その1頭だけのオスが死ぬと、群の中のメスのどれかがオスに変化して精子を供給するようになります。キンギョハナダイもハーレムは作りませんが、近くにオスがいない環境にいるメスはオスに転換する傾向があります。

カミナリベラではオスに生まれた個体はずっとオスですが、メスに生まれた個体は、近くにオスがいない場合自分がオスになることがあります。しかしこの「メスあがりのオス」は生まれながらのオスよりも小さくて弱く、そのオスが率いるハーレムに生まれながらのオスがやってくると、勢力争いに負けて追い出されてしまいます。カミナリベラの場合、この小型のオスというのは、大きなオスのいる所では生きていけないのでメスとして生殖活動を行うことにより自分の子孫を残せるようにしているが、大きなオスのいない所では自分がオスになってまわりのメスに大量に精子をばらまいた方がたくさん子孫を残せるということで、こういう転換の仕方をするのだと言われています。ただしこのオスに転換するのは一種の博打でもあるわけです。

カキなどは生殖時期が終了するといちど中性になり、その後の栄養状態が良いとメスになり、悪いとオスになります。

●性の決定の仕組み

性転換を行わない生物では、性の決定は環境により決まるものと、遺伝子で決まるものとがあります。は虫類の中には、卵が孵化する時のまわりの温度によってオスとメスが決定するものがあります。また子供の頃の栄養状態が良いとメスになり、悪いとオスになるものもあります。

ほ乳類や鳥類では性染色体により性が決定します。ほ乳類の場合はメスがXX、オスがXYであって、Y染色体の存在がオスの身体を作り上げます。これに対して鳥類の場合はメスがZWで、オスがZZになっていて、ほ乳類とは逆にW染色体の存在がメスの身体を作り上げます。

●変則的?な生殖法

この手の話をすると毎度おなじみプラナリアですが、プラナリアの一部には夏には無性生殖を行い、冬には有性生殖を行うものがあります。またイシサンゴは有性生殖と無性生殖のどちらもすることができて、分裂によって自分のコピーをすぐ近くに作ることもできれば、受精によって自由に動き回る幼生(プラヌラ)を作り、この幼生が海の中を動き回ってどこかの岩に定着してそこで成長する場合もあります。

また世代によって生殖の仕方が異なる生物も多く知られています。クラゲの類は有性生殖によってプラヌラ型の幼生を作り、これは成長するとポリプという形の成体になります。ところがこのポリプは無性生殖で増えます。そして水温などの条件が成立するとストロビラという、たくさんくびれた形の生殖体に変化し、このくびれのひとつひとつが分離して、エフィラという幼生になります。このエフィラが成長するとクラゲ型の成体になるのです。

同様の現象はシダ植物、コケ植物などでもみることができます。



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