受精に至るプロセス

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■受精に至るプロセス
●放出型の受精

有性生殖においては、卵子と精子を結合させて受精卵を作り出します。この受精卵が成長して新しい個体になる訳です。この時、卵子は大きくて数が少なくあまり動かないのに対して、精子は小さくて数が多く盛んに動き回ります。その場合にどのようなメカニズムで、両者を出会わせ結合させるかというのが問題になります。

魚類の場合は卵子も相当数が水中に放出されます。そしてそこにすかさずオスが精子を大量に振りかけます。この方法は、魚類の子供が成体になるまで生き延びれる確率が極めて低いことから、大量に受精卵を作らなければならない事情を反映しています。たくさん作らなければならないのであれば、あまり丁寧なことはやっていられない訳です。しかしこの水中で受精させるという方法は、それ自体が受精の確率が落ちる方法です。実際、メスを普通の手段では確保できない小型のオスが、大型のオスと良さそうなメスとの愛の営みの瞬間を狙ってそこに割って入り、ちゃっかり自分の精子を受精させてしまうような例も見受けられます。

※一部、挿入器(ペニス)を持ち、体内受精を行う魚類もいる。

●精包を使用するタイプ

両生類や昆虫類などには精包を使って受精をするタイプがよくいます。これはオスが精子のたっぷりつまったパッケージをメスに贈り、メスはその包みの中の精子を使用して自分の卵子に受精させるというものです。この精包はすぐに使用されるとは限らず、メスが自分の貯精嚢の中に保存しておいて、卵を産むときに使用します。この保存期間はかなり長期に渡る場合もあり、メスは自分の産卵のペースに合わせて、良いオスが得られなかった時のために、予備をずっと何年間も取っておくような場合(遅延受精)もあります。

精包を使うタイプの生物でも、オスたちは自分の子孫を残せる確率を何とかあげようと頑張ります。たとえばサンショウウオの場合、近くにライバルになりそうなオスがやってくると、自らメスの振りをしてそのオスに近づき、求愛行動を取ります。それにうっかりのぼせて精包をそのオカマちゃんに渡してしまうと、そのオカマちゃんは精包を捨てて、さっと逃げていってしまいます。すると地面に捨てられている精包を本物のメスが拾ってくれることはありえず、そのオスは次の精包を生産するのに何日もかかるので、とりあえずその数日間はライバルを遠ざけることができる訳です。

またトンボなどでは、メスの身体に挿入されている精包を強引に取り出して自分の精包を押し込むオスなども見受けられます。もっとも全ての種でこういう「奥さんの横取り」のようなことが起きるわけではありません。モンシロチョウなどは一度精包を受け取ったメスは貞操を立てて、他のオスとの接触を拒否するので、このような妨害は発生しません。この付近は精包を受け取った後でも更に良いオスを求めた方が有利か、あまり色々探していて結果的に変なのに引っかかるのを恐れて自分が気に入ったオスからのプレゼントをずっと守るのが有利かという、考え方の違いでしょう。

精包を使用するタイプの場合、劣悪な環境の中でも子孫が残しやすいという利点はあるのですが、それなりの色々な駆け引きが行われているようです。

●交尾を行うタイプ

鳥類、は虫類、ほ乳類などは、受精作業をメスの体内で行います。これを体内受精と言いますが、そのためにはオスが精子をメスの身体の中に直接送り込む必要があります。これを「交尾」と言います。一般にこのタイプの生物では精子は液体状の「精液」の形で送り込まれます。また、その際オスは精液を放出するための身体の器官をメスの体内に挿入する場合もあります。

交尾に似たものとしてはカエルなどが行う「抱接」があります。これは体外受精なのですが、オスは産卵するメスをしっかり抱っこしていて、両者の生殖口もほとんど密接しています。そしてメスが産卵すると同時にオスはそこに精液を掛けて受精させます。

鳥の交尾の場合はカエルの抱接にかなり近いものがあります。鳥の場合、オスの生殖器はほとんどメスの生殖孔に入りません。どちらかというと「穴同士を接触させている」という感覚のようです。ですからメスがそのオスを嫌ってちょっとでも身体を動かすと、交尾は成立しません。

は虫類や多くのほ乳類では、オスの生殖器が発達しており、長い棒状の挿入器をメスの生殖孔に入れますが、この時、いったん入れてしまえばその後でメスが嫌がっても簡単には抜けないようにトゲが付いているものも多いようです。種によっては、精液の放出後、オスが生殖器を裏返して引っ込めないと抜くことは不可能なものもあります。

なお、鳥類やは虫類では、受精したあとでメスはその卵を体外に排出しますが、ほ乳類の場合子宮という器官を持っていて、その卵が孵ってある程度大きくなるまで体内で育てます。これを「胎生」と言います。卵の状態や生まれて間もない状態では外敵に襲われた時に逃げようがないので、自分の子供の生存確率を少しでもあげるための技術と考えられます。その代わり、ほ乳類は一度に生む子供の数が他の類に比べて非常に少ないのです。

●植物の受精

植物の場合、その生殖器は一般に「花(flower)」と呼ばれており、その美しさは動物をも魅了する。ここで動物が花に惹かれるのは重要な意味がある。つまり植物はそのことにより自分の遺伝子を拡散する手助けを動物にさせるのである。動物、例えば人間がその花の美しさに目を留めて1つ手折り、どこかに持っていけばその花の花粉(精子)が他の花の雌しべ(卵子)に接触して受精する可能性が出てくるのである。

人間はこの美しき植物の生殖器を、しばしば恋人へのプレゼントに使用する。極めてあからさまに「君とやりたい」と言っていることになるが、そういう意味は一般に無意識下に抑圧されていて、贈られた側は贈ってくれた人が好きであれば「まぁ、きれい」と喜んで花瓶に飾ったりする。そして、そのお花のある場所で愛の営みを始めたりするのである。

花には雌雄同体で、雄しべ・雌しべの両方を持つものと、雌雄異株で雄しべだけの物と雌しべだけの物とに別れているものとがあるが、どちらかというと前者の方が多いかも知れない。植物としてはできれば他の個体と受精を行いたいのだが、どうしても自分の仲間が調達できない場合には自己受粉して取り敢えず子孫を残す道を選ぶことができるという利点を優先するのであろう。動物と違って植物は根をはやした場所から自分で移動することができないので、たまたま仲間のいない所に根付いてしまった場合、他に選択肢が無いのである。

植物は動物を魅了するのにその花の形の美しさだけではなく、甘い香りも使用している。人間も花の香りを楽しみ、それ自体がお互いの性的な気分を昂めるが、人間の場合それほど嗅覚が発達していない。むしろ凄いのは蜂や蝶である。彼らは数キロ先にある植物の香りをかぎ分けてやってくる。蜂や蝶がそこに来てくれるのは、花が甘い蜜を提供するからである。しかし蜂や蝶が蜜を吸う時にその手足には花粉が付着し、それが別の花でまた蜜を吸う時にそちらの花の雌しべに付着して受精が行われる。

●特殊?な受精方法

ミミズは雌雄同体で、雌性生殖器と雄性生殖器の両方を持っています。そして受精は気に入ったミミズ?と出会ったら相互交接の形式で精子のやりとりをします。つまりミミズのAさんとミミズのBさんが出会うと、Aさんは自分の精子をBさんの雌性生殖器の中に送り込むのと同時に、Bさんも自分の精子をAさんの雌性生殖器の中に送り込むのです。しかも、二頭のミミズはこの「ダブルセックス」をしている最中、ゼリー状の液で自分たちの身体を包み込んでしまいます。つまりHをする前に家を作るわけで、なかなかすごい。しかもこの「家」はその後で生まれた受精卵を保護する役目も果たすのです。ミミズって意外と高等な生き物なのかも知れません。

カタツムリもやはり雌雄同体でミミズと同様の「精子交換」で同時受精します。カタツムリの場合は角の先にある生殖門を相互にくっつけ、それぞれ自分の生殖器を相手の身体に差し入れて精子を放出します。

タコは精包を使うタイプですが、オスは自分の腕の内の1本を使用してそれをメスの身体の中に押し込みます。このために使用する腕の先には吸盤がなく「交接腕」と呼ばれています。これがは虫類やほ乳類で言えば、ペニスの役目を果たしているわけです。そういう意味ではタコというのはメスは8本足だが、オスは7本足+ペニスと考えることも可能なのかも知れません。イカの場合もタコと同様にオスの10本の腕の内のひとつが特殊化していて交接腕になっています。

タコの一部にはオスがメスより極端に小さいタイプがいます。アミダコなどの類ですが、この場合身体は小さくても交接腕だけは発達していて、身体本体よりも長くなっています。そしてメスと出会うと精包を交接腕にのせてメスに押し込みますが、オスはそのまま腕を切断してしまいます。するとその腕が精包の外ブタの役割を果たし、受精は万全ということになります。この腕はそのままメスの体内に残ることになります。しかし人間で言えばセックスしたらそのまま、おちんちんを根元から切断して女性のヴァギナの中に残してしまう、なんて話で、いや凄いですね。

このように交接の際に自分の身体を犠牲にするタイプのオスは比較的広く見受けられます。クモの仲間には、交接しながら自分自身をメスに餌としてプレゼントしてしまい完全に食べられてしまうものもいます。カマキリのオスもご存じのようにメスの食糧になることになっています。まさに子孫を残すのも命がけ。

チョウチンアンコウの一部の種にはオスがメスの何十分の一というサイズで、メスのからだに付着し、組織的にも一体化してしまっているものがあります。このオスは自分では餌をとらずに、メスのからだから直接栄養を供給してもらって生きています。しかし精子をメスに渡してしまった後は力つきて、メスの身体の中に完全に吸収され消滅します。



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