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遣隋使(607)

推古天皇15年(607)7月3日、朝廷は小野妹子を随に派遣しました。

日本書紀で遣隋使が記述されているのはここが最初ですが、中国側の記録(隋書東夷伝)ではこれは2度目で、最初は推古天皇8年(600)とされています。従来日本は朝鮮中心の外交をしていたのですが、これを境にして中国を外交の中心に据えることになります。この重大な方針転換に関することで(隋書東夷伝を信用した場合)最初の派遣の記述が欠落しているというのは不思議なことです。もしかしたら推古天皇8年の派遣というのは事前調査か何かのつもりで、日本としては推古天皇15年が最初の正式の派遣ということだったのかも知れません。

なお、推古天皇8年の時は日本は朝鮮半島での動乱に関与して出兵をしている最中でした。確かにそういう時に今まで付き合いのなかった(100年前には倭の五王が宋に朝貢しているが遙か昔の話である)中国に使者を送るのも変な気はします。また推古天皇8年の時の隋の皇帝は文帝ですが、15年の時はその文帝を倒して皇位にあがった煬帝の時代です。

この時、使いを派遣した「倭王・阿母多利思比狐(あめのたりしひこ,聖徳太子のことか?)」は小野妹子に煬帝宛の次のような有名な手紙を託していました。

『日出處天子致書日没處天子無恙云々』(隋書東夷伝・原文通り)

(日いづる所の天子、書を日ぼっする所の天子に致す。つつがなきや?...)

これを読んだ煬帝は激怒しますが、そのまま妹子をとめおき、翌年春裴世清らを付けて日本に帰します。そして日本側も彼らを歓迎し、その帰国の際には妹子と他に何人かの留学生をつけて中国に派遣しました。これより日本と隋の交流が始まり、中国の進んだ文化が直接日本に入ってくるようになるとともに、また日本の東アジアにおける外交上の地位も著しく向上しました。この方針を進めた聖徳太子の外交政策は大成功であった訳です。

日本書紀には裴世清らを小野妹子が送っていく時の天皇(推古天皇,聖徳太子の伯母)の言葉として「東の天皇が西の皇帝に申し上げます。。。。お変わりはないでしょうか?」という記述が出てきます。これぞまさに小野妹子が持っていった文書の内容にそっくりです。

さて、ところで煬帝が怒ったのは2点あります。ひとつは日本を「日出處」と言い中国を「日没處」と言ったことで、まるで隋が落日の国のような印象を与えたこと。もうひとつは日本の王に「天子」という、それまでは中国の皇帝にしか使われていなかった言葉を使っていたことです。

むろん抜け目のない聖徳太子のことですから煬帝が怒るのは承知の上で、これからは対等な関係で行かせてもらいますよという示威をしたのでしょう。それまでは中国と交際していたのは中国から見れば属国同然の新羅・百済・高句麗などで、倭国はその新羅や百済と付き合っていた訳ですから、中国からすると属国の属国のようなものと思われていたことは想像に難くありません。

しかしこの時期朝鮮では動乱が続き、北方でもきなくさい動きがあります。隋自体が出来てからまだ20年ほど。しかも煬帝自身、中国の統一者である父を殺して皇位を手に入れた立場上、国内にも火種はあり、そういう時に隋が出来たのと同じ頃に国内の混乱が落ち着き安定した政権を維持している日本と付き合うことは、決して損にはならないという計算が成立したものと思われます。故に煬帝はこの無礼な新参者を手厚くもてなしたのでしょう。

この遣隋使を巡る謎の一つに、煬帝から小野妹子を通じて倭王に宛てられた親書を百済で奪い取られた、という記述が日本書紀にあることです。日本書紀ではそれを群臣が責めたが、推古天皇は中国からの客人も来ていることだし、妹子を罰する訳にはいかないといって妹子に一切責任を取らせていません。しかもこんな大失敗をした人物を更に翌年また隋に送り出すのですから、あまりにも寛容が過ぎる印象があります。またそれ以前の問題として、日本人だけならいざ知らず、中国からも十数人の人間が派遣されてきていて、当然彼らを警護する兵も相当の数あったと思われるのに、百済人に親書を取られた、という話は一体何なのだ?という感じもあります。

そこで、実は親書は奪われていなかったのだが、群臣の中で朝鮮系の人たちの勢力が大きく、彼らはそもそも中国に使いを派遣することにも反対していたので、彼らへの対策として、親書の内容は明かさず、そのため途中で奪われてしまったことにしてしまった、という説を述べる人もいます。だからといって奪われたことにするというのは少し無茶な気もしますが、確かにここは日本書紀の記述をそのまま信用はできないかも知れないと思わせられる箇所です。


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