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カトリーヌ・ドヌーブ(1943-)

演技と私生活が連動していると言われ、嫌ったり批判する人もあれば、その体当たりの演技(?)を絶賛する人もある、フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーブ(Catherine Deneuve,誕生名Catherine Fabienne Dorleac)は1943年10月22日、パリで生まれました。

お父さんは俳優のモーリス・ドルレアック(Maurice Dorleac)。お姉さんのフランソワーズ・ドルレアック(Francoise Dorleac)も彼女より先に国際的な女優として活躍していました。ドヌーブというのはお母さんの旧姓で、このお母さんのルネ・ドヌーブ(Renee Deneuve)も女優でしたので、演劇一家に育ったことになります。

デビューは13歳の時で、最初は端役ばかりでしたが、1963年にRoger Vadim監督の「La Vice et la vertu (悪徳と美徳,邦題:悪徳の栄え)」で美徳役を演じ、初めて大役をもらいます。そして翌1964年のJacques Demy監督の名作「シェルブールの雨傘」(Les Parapluies de Cherbourg)は彼女を一躍スターにしました。この映画はカンヌ映画祭でグランプリを取ります。

このシェルブールの雨傘で彼女は結婚できないまま恋人の子供を産む女性の役を演じていますが、実はこの時期彼女はRoger Vadim監督と同棲中で1963年6月18日に男の子(Christian Vadim)を産んでいますが、監督とは結局結婚できないまま別れており、私生活と劇中の役が重なっていることが大いに話題になりました。

その後同じDemy監督の「ロシュホールの恋人たち(Les Demoiselles de Rochefort,1967)」、Luis Bunuel監督の「哀しみのトリスタナ(Tristana,1970)」などに出演、この時期写真家のDavid Bailey(1938.01.012-)と1965年8月19日に結婚していますが1972年に離婚しています。

1971年の「他人にしか起こらないこと(Ca n'arrive qu'aux autres,-哀しみの終わる時-とも)」は物悲しいミッシェル・ポルナレフ(Michel Polnareff)の歌が印象的でした。映画のプロットを象徴的に歌った『一羽の小鳥が増えるのと一羽の小鳥が減ることの違い』という歌詞は子供を持つ親には涙なしでは聞けないものです。

この映画で彼女の相手役を演じたマルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Mastroianni, 1924.09.28-1996.12.19)とは「ひき潮(Liza,1972)」でもまた共演しますが、彼女は私生活でも、1972年5月28日にマストロヤンニとの間に女の子(Chiara Mastroianni)を設けています。むろん結婚はできていません。

ちなみにマストロヤンニという人は「ひまわり(Sunflower,1970)」で共演したソフィア・ローレン(Sophia Loren)、「恋人たちの場所(Amanti,1968)」で共演したフェイ・ダナウェイ(Faye Dunaway)、などひじょうに多数の女優との交際をしたことが有名で、ソフィア・ローレンも彼の葬儀に出席していたようですが、ドヌーブは娘のキアラと共にマストロヤンニの最期を看取ってあげています。マストロヤンニという人の人柄が偲ばれる気もします。

(アメリカの大女優Sとの交際もあった気がするのだが、確認できなかった)

1980年にFrancois Truffaut監督が撮った「終電車(Le Dernier metro)」はとても美しい作品でした。共演は色男のジェラール・ドゥパルデュ(Gerard Depardieu,1948.12.27-)ですが、さすがにこの時期になると私生活は自制が効いています。しかしこれもまさに体当たりという感じの演技をしています。この作品は1980年のセザール賞の作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞を受賞しています。

もっとも「ひき潮」の頃と「終電車」の頃では同じ体当たりの演技でも、もう『風格』の違いを感じるほどです。そして更に貫禄を見せつけてくれたのは1992年の「インドシナ(Indochine)」(Regis Wargnier監督)などでしょう。この作品では彼女はアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされています。

■シェルブールの雨傘(1964)ノルマンディー半島の小さな町シェルブールで17歳の傘屋の娘ジュヌビエーブは自動車修理工の青年ギュイ(Nino Castelnuovo)と恋し、結婚したいと言いますが、母親がまだ若すぎると言って許してくれません。そのうち、ギュイは兵役に就くことになり、アルジェリアに出征していきます。この時彼女は妊娠していましたが、彼からの消息はなくなってしまいます。そしてその子には父親が必要だという声に負けて、彼女は別の男性ロラン(Marc Michel)との結婚を選びます。

■ひき潮(1972)時々誤解されるのですがイージーリスニングの名曲「ひき潮(Ebb Tide)」とは無関係です。この映画はテレビでも放映される機会が多いので見たことのある人も多いと思います。筋を書くのはなかなか難しい。あるようでないような不思議な世界が描かれています。友人たちと海水浴に来ていたリザは島で自給自足の生活を送る男(Mastroianni)と出会い、男と一緒に暮らし始めますが、男は彼女には興味を示してくれません。男が可愛がっている犬に嫉妬した彼女はある日、その犬を溺れさせて殺してしまいます。その事を知った男は、リザに犬の代わりをすることを命じ、棒を投げて取って来させたり、犬のようにぺろぺろ顔を舐めさせたりします。やがて男の妻(Corinne Marchand)が迎えに来て男は家に帰ってしまいますがリザは男の家に行って犬の真似をして島に戻ってくるよう促します。ショックを受けた妻は自分も犬の真似をしようとしますが、男に「やめろ」と言われます。そしてまた島でのふたりの生活が始まりました。こう書くとまるでポルノ映画ですが、そんなエロい作品ではないですから高校生くらいなら観てもいいと私は思います。

■終電車(1980)ナチスドイツ占領下のパリ、夜間外出禁止令が施行されている中、夜遅くまで仕事をしていた人たちは終電車に遅れないよう駆け込む日々でした。そんな中モンマルトル劇場では演出家のジャンルー(Jean Poiret)が顔が広く、ドイツ軍にもコネが効くことから、何とか営業を続けていました。この劇場の支配人でメイン女優マリオンの夫でもあるルカ(Heinz Bennent)はユダヤ人であったため、ドイツ軍の侵攻と共に国外に亡命したことになっていましたが、実は劇場の秘密の地下室に隠れ住み、舞台との間に設置した伝声管を通して舞台稽古の様子を聴き、マリオンに指示を出していました。その事はマリオン以外には誰も知りませんでした。ここに新しい作品「消えた女」でマリオンの相手役をすることになった俳優ベルナール(Depardieu)がやってきます。彼は密かにドイツ軍へのレジスタンスに参加していました。

 解説してしまうとネタバレになるので書けないラストがあまりにも美しい。マリオンとルカとベルナールの不思議な三角関係は調和的で、全く嫌悪感やストレスを感じさせません。この付近はさすがトリュフォー監督です。停電している時にみんなで自転車を漕いで発電して照明を維持したり、ストッキングが入手できないので、ストッキングの縫い目をペンで足に描いてあたかも履いているかのように見せたりとか、戦時下のパリの様子がいろいろ描かれているのも楽しい所。釣り竿2本でDeux Gaule という洒落はこの当時のイギリスに出来ていたフランス亡命政府の首班がドゴール(Degaulle,後にフランス大統領。ただし当時は実は単なる元国防次官にすぎなかった)であったということを知っていないと分からない洒落になってしまいました。


(2004-10-21)

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