↑→ 心理学の歴史(1)心理学以前
●古典的心理学

 心の問題については古くから考える人たちがいたと思われますが、文献的
 に残っている最古の記録はギリシャの哲学者たちの考察です。
 
 プラトンは心は頭に宿っていると考え、霊魂が脳に働きかけて心の作用が
 発生すると考えました。またアリストテレスは心は心臓にあると考え、
 五感によって得られた刺激が心臓に集結して心を形成すると考えました。
 
 またガレヌスは人間の体内を流れている体液のバランスによって人間の
 気質が定まるという仮説を立てました。彼の理論は人間の体内には血液・
 粘液・黒胆汁・黄胆汁という4つの体液(各々西洋の四元素風水土火に相
 当する)が流れているというヒポクラテスの仮説にもとづき、血液(風)
 が多い人は陽気、粘液(水)が多い人は冷静、黒胆汁(土)が多い人は
 陰気、黄胆汁(火)が多い人は短気、といったことを述べています。後の
 中国の四柱推命の性格学に通じるような考え方です。
 
 この時代の心理学はまだ「科学」以前の心理学でした。

●近世の哲学的心理学

 ルネッサンス以降になると、心に関するもう少し精密な考察がなされるよ
 うになります。

 デカルトはルネッサンスによって台頭してきた唯物論的な思想の中で動物
 の身体は神経細胞や筋肉などによって構成された機械にすぎないと考え、
 しかし人間だけは特例で、大脳の中の松果腺で心とつながっているとする
 「心身二元論」を展開します。
 
 (ちなみに松果腺は脊髄動物のみに見られるもので実際には性ホルモンに
  関わる仕事をしています)

 またライブニッツは有名なモナド論により、心もこのモナドの集合体であ
 るという説を展開しています。

●先天か後天か

 心理学において最初の科学的な考察を行ったのは John Locke(1632-1704)
 です。彼は人間の観念は全て経験により習得されるものであり、生得的な
 ものは存在しないという「完全後天説」を唱えました。この先天か後天かと
 いう論争はほんの20年くらい前までまだあったものですが、その論争の出発
 点となったのが彼の理論であると言えるでしょう。

 彼の思想は人間が生まれた時は完全に同等であるということを主張するもの
 でもあり、近代の貴族も平民もないという平等思想へとつながっていく要素
 も持っていました。
 
 このロックの考え方は更に G.Berkely(1685-1753), D.Hartley(1705-1757)
 D.Hume(1711-1776) らに引き継がれていきます。

●生理学の影響

 19世紀に入ると生理学が発達してきて、1822年には感覚神経・運動神経の
 別などが発見されます。この時代にユニークな研究をしたのがJ.Mueller
 (1801-1858)。彼は各々の神経繊維には各々伝える情報が固有に決まってい
 るという「特殊神経エネルギー説」を唱えます。
 
 これを発展させたのがH.L.von Helmholtz(1821-1894)で、彼は神経の各繊
 維が固有の情報を担当しているという「特殊繊維エネルギー説」を唱えま
 した。またHelmholtzは、神経信号は電流であるというレイモンドの仮説
 に基づき刺激が与えられてから生物が反応する時間の測定実験などもやっ
 ています。その結果、カエルでは30m/s, 人間では50〜100m/sで神経上の
 情報が伝達されていると推定しました。
 
 このミューラーやヘルムホルツの理論は更にフルラント,ブロッカ,ウェル
 ニケらにより精密に確認されていきます。
 
 フルラントはヘルムホルツらの理論を発展させ、脳の各部分が固有の機能
 を持っているのではないかと推定しました。ブロッカは失語症の研究から
 脳の特定の場所に外傷を受けた人が失語症になっていることを発見し、そ
 の部分(左半球・前頭葉・第三前頭蓋)付近に言語中枢があることを推定
 しました。これは実は運動性失語症、つまりその言葉が出てこないタイプ
 の失語症の患者です。
 
 ウェルニケが研究したのが逆に感覚性失語症の患者、つまり人の言葉を
 理解できないタイプの失語症です。彼はこの研究で聴覚と関係して言葉を
 理解する機能が側頭葉にあることを確認しました。
 
 ライプニッツの楽天的なモナド論などからすると、ずいぶん発達したもの
 です。
 
 またこれらに関連して、H.Weber(1795-1878)は人間の感覚に関して詳細な
 研究を行っています。例えば物が熱いか冷たいかというのは皮膚の全体で
 感じている訳ではなく、熱い物は温点で、冷たい物は冷点で感じているこ
 とを突き止めます。そして彼は冷点に熱い物をピンポイントで接触させた
 時、人間がむしろ冷たいと感じることを実験で確かめました。また彼は
 人間の最小可知差異についても研究しています。平均的な人間の場合差異
 が分かるのは、重さでは40分の1くらい、長さでは50〜100分の1くらい、
 音の高さでは160分の1くらい、という報告をしています。
 
 このような分野は後に「知覚心理学」として発達していくことになります。


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