阿弥陀如来

日本人の信仰というものを考えた時、キリスト教国と比べて面白いものに、仏
教なり神道の教えについて、ほとんどの人が関心を持っていないということが
あげられます。これはキリスト教が神との契約に基づいて神を信じた人を救済
するという立場に立つのに対して、日本における仏教というのは無条件に人を
救済する立場に立つからかも知れません。そのため「アーメン」は救済される
本人が唱える言葉ですが「なんまいだ」こと「南無阿弥陀仏」はむしろ生き残
った人が既に死んだ人が救われるようにと唱える言葉なのです。

さて、この「南無阿弥陀仏」ですが、「南無」は帰依しますという意味で、お
経の中では「帰命」いう表現になっていることもあります。在家信者のお勤め
のお経として親しまれている「正信念仏偈」の冒頭は「帰命無量寿如来 南無
不可思議光」となっていますが、「南無」と「帰命」は同じことです。つまり
「南無阿弥陀仏」とは阿弥陀(あみだ)仏様におすがりします、という意味で
すが、阿弥陀仏にすがるとどんないいことがあるのでしょうか?

阿弥陀如来は仏教の初期の頃から重要な役割を担ってきた仏で、人々が死後行
くという西方極楽浄土の教主です。阿弥陀は仏になる前は法蔵菩薩という名前
でしたが、その法蔵は修行中に48の誓い(この誓いの数については異説もあ
る)を立てます。それは「未来永遠にわたってあらゆる人々が浄土に行けるよ
うにします。それができなかったら私は仏になりません」という内容のもので
した。

これが阿弥陀の本願と呼ばれるもので、特にその第18には「どのような人で
も心から極楽浄土に行きたいと願って念仏を唱えれば必ず浄土に行ける」とい
うものがありました。この条項は以前はさほど注目されていなかったのですが、
これを重視したのが浄土宗・浄土真宗で、阿弥陀のその心を信じ、極楽往生を
願って南無阿弥陀仏と唱えれば必ず極楽へ行けると説いたのです。ここに
「南無阿弥陀仏」という念仏(従来の念仏〜観相念仏〜に対して称名念仏とも
いう)が生まれました。つまり阿弥陀仏にすがって極楽へ行きましょうという
ことで、これを他力本願といいます。(つまり、他力本願というのは自分では
何もしないでいいというのではなく、最低でも阿弥陀にすがる気持ちがないと
成立しません。)

この考え方は庶民から大変歓迎されました。本来の仏教の思想というのは生病
老死に象徴される生きとし生ける者の苦悩をどのようにしたら克服できるかと
いうことを思索することにあります。この為仏道に入った人々は色々な修行を
して悟りを開き、解脱・即身成仏の境地に至るのです。しかし、そのようなこ
とは普段の社会的生活とはどうしても両立しません。また仏教には色々な戒律
があった訳ですが、それもとても庶民には守れるものではありませんでした。
そのため、それまでの仏教では、庶民は永久に救われなかったのです。

ところが浄土宗や浄土真宗はただ「南無阿弥陀仏」と唱えればそれで人は救わ
れるのだと説きました。それはどんなに不摂生な生き方をしていても、阿弥陀
様におすがりすれば、阿弥陀様が必ず救ってくれるから、という思想に基づい
ています。法然が庶民と交わした問答集が残っていますが、「にらやにんにく
を食べたままの口で念仏を唱えてもいいか?」という問に法然が「構いません」
と答えるなど、微笑ましいやりとりが見受けられます。

さて、その界隈についてはまた鎌倉仏教に触れる時に論じることになると思い
ますが、阿弥陀本体の方について、もう少し述べましょう。

阿弥陀如来は通常浄土宗や浄土真宗のお寺に本尊として祀られていますが、脇
侍は左が観音菩薩、右が勢至菩薩になります。また、西方浄土の主ですから、
マンダラなどでは方位的に必ず西に配置されます。

阿弥陀如来の結ぶ印は時代とともに移り変わって来ており、初期の頃は説法印
や転法輪印だったのが、やがて上品上生の印になり、後に来迎印になっていっ
たとされます。従って、阿弥陀如来の仏像の結んでいる印を見れば、それでお
およその時代が分かる場合があるそうです。

阿弥陀如来は無量寿如来であるとか無碍光如来の別名があり、限りない命と限
りない光(智恵)にあふれた仏であるとされます。その光にあふれた仏という
イメージは西方で光輝く夕日のイメージと重なり、柳田国男の言うところの霊
魂が山へ行くという信仰などとも合わさって、平安時代頃には阿弥陀が多くの
菩薩を従えて山の上から死者を迎えに来る「阿弥陀来迎図」という絵画が多く
描かれました。知恩院の二十五菩薩来迎図などはその典型的な形です。

【真言】

阿弥陀如来      種字キリーク
 オン・アミリタ・テイゼイ・カラ・ウン

無量寿如来(=阿弥陀如来) 種字アン
 ナウマク・サマンダ・ボダナン・サンサク・ソワカ



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