大日如来

大日如来(だいにちにょらい)は宇宙の中心仏であり、宇宙そのものといって
もよいような存在です。胎蔵曼荼羅(たいぞうまんだら)・金剛界曼荼羅
(こんごうかいまんだら)の中心におかれ、そこから全ての仏が生まれていき
ます。実態としては毘盧遮那(ビルシャナ)如来と同じですが、見方が異なりま
す。これは自民党総裁と日本国首相が同一人物であっても意味合いが異なるの
と似ています。

曼荼羅(まんだら)というのは、一定の調和性をもって構成された図式または
配置(インスタレーション)のことをいいます。そういう意味では大部分の
絵画は曼荼羅であり、美術館などはその存在そのものが曼荼羅です。古くからの
神社やお寺も伽藍や神殿の配置は曼荼羅の様を成しています。

ユングは自らがフロイトと決別した後の精神的混乱から回復する過程で沢山の
象徴的な図形を描き、後にそれが東洋の曼荼羅と似ていることに気付いてその
研究をしたことで知られています。彼の研究した曼荼羅はアラビアの幾何学模様
などとも似ています。

一般に曼荼羅として最も有名なものは、東寺(京都市)に伝わる胎蔵曼荼羅・
金剛界曼荼羅の「両部曼荼羅」です。このふたつの曼荼羅は初期の密教と中期
の密教を代表する象徴で、これを並べてみたのは東寺を開いた弘法大師・空海
あるいはそのお師匠さんの慧果ではないかともいわれています。以前は私は
様々な仏の原始的な力があふれている胎蔵曼荼羅の方が好きだと発言したので
すが、あの当時から15年の月日がたってみると、金剛界曼荼羅の良さも少しは
分かってきたような気もします。

■胎蔵曼荼羅の大日如来

 胎蔵曼荼羅の中でも中央に陣取っている「中台八葉院」の中心に大日如来が
 描かれています。そのまわりには四如来と四菩薩が配置されています。
 
 東(上・発心) 宝幢(ほうどう)如来
 南(右・修行) 開敷華王(かいふけおう)如来
 西(下・菩提) 無量寿(むりょうじゅ)如来
 北(左・涅槃) 天鼓雷音(てんくらいおん)如来
 
 南東(右上・浄菩提心) 普賢(ふげん)菩薩
 南西(右下・智慧) 文殊(もんじゅ)菩薩
 北西(左下・菩提) 観自在(かんじざい)菩薩
 北東(左上・涅槃) 弥勒(みろく)菩薩

 また四隅には宝瓶(ほうびょう)が置かれています。

 胎蔵曼荼羅の大日如来の真言はナウマク・サマンダ・ボダナン・アビラウンケン
 で、種子はアークです。
 
 不空によれば、アビラウンケンの5文字自体が、五大を表すとされています。
 ア=地、ビ=水、ラ=火、ウン=風、ケン=空です。また種子のアークには
 発心(ア)、修行(アー)、菩提(アン)、涅槃(アク)という4つの文字
 が隠れています。
 
 「アビラウンケン」は昔の忍者映画では忍者の唱える呪文の代表的なものの
 ひとつでした。最近の漫画やドラマに出てくる呪文は、こういう「マジ」で、
 本当に効いてしまうかも知れない呪文を避けて、意味不明のことばを発明
 する傾向が強いように思われます。なおアビラウンケンは「アブラカタビラ」
 と同根という説もあります。大日如来自体がアフラマズダと同根という説も
 あるので、あながち荒唐無稽ではないかも知れません。
 
 なお四如来の真言は下記の通りです。
  宝幢   ナウマク・サマンダ・ボダナン・ランラク
  開敷華王 ナウマク・サマンダ・ボダナン・バンバク
  無量寿  ナウマク・サマンダ・ボダナン・サンサク
  天鼓雷音 ナウマク・サマンダ・ボダナン・カンカク
 
 胎蔵曼荼羅に描かれる大日如来は、腕釧(わんせん−腕飾り)、臂釧(ひせん
 −足飾り)、瓔珞(ようらく−珠飾り)などを付け、宝冠までかぶっています。
 こういう華やかな姿を取るのは一般に菩薩像に多く、如来像はふつう質素な
 衲衣(のうえ)だけを着ているのですが、全ての如来の源である大日如来だけ
 は例外的にこういう王者の姿をしています。
 
 大日如来がこういう姿をするのは、別格のしるしであり、時々これを理解して
 いない論者が「こんな姿をするのは大日如来は実は菩薩だからだ」などと主張
 したりするのは、まさに不勉強の極みでしょう。逆に菩薩の中でも地蔵菩薩は
 例外的に質素な姿をしていることが多いです。
 
■金剛界曼荼羅の大日如来

 金剛界曼荼羅の中央部には成身会があり、そこの中央にやはり大日如来が描か
 れています。こちらの大日如来も華やかな姿をしています。胎蔵曼荼羅との
 最も大きな違いは結んでいる印で、胎蔵曼荼羅では禅定印だったのが、金剛界
 曼荼羅では智拳印になっています。金剛界のほうが精神性が高いというわれる
 ひとつの象徴にもなっています。
 
 金剛界曼荼羅の大日如来の真言はオン・バザラ・ダド・バン。種子はバンです。
 これはギリシャ神話の古い神「パン」にも通じ、宇宙のビッグバンが発生した
 音の象徴でもあります。卒塔婆の裏面にこの種子が書かれることもありますが
 この文字から大日如来が生まれ、大悲水となって全ての煩悩を洗い流してくれ
 ることを祈るものです。
 
 成身会の大日如来のまわりにも四如来が見られます。
 
  東(下)阿閦(あしゅく)如来
  南(左)宝生(ほうしょう)如来
  西(上)阿弥陀(あみだ)如来
  北(右)不空成就(ふくうじょうじゅ)如来
  
  真言は下記の通りです。
  
  阿シュク オン・アキショウ・ビヤ・ウン
  宝生   オン・アラ・タンナウ・サンババ・タラク
  阿弥陀  オン・アミリタ・テイゼイ・カラ・ウン
  不空成就 オン・アボキャ・シッデイ・アク

 金剛界曼荼羅の成身会の構成はひじょうに複雑で、ここで書き出すと長くなり
 ますので、またの機会に述べたいと思います。


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