仁王

金剛力士ともいい、一般に寺の門を両側から守る左右一対の守護神です。右
は口を開き阿形といい、左は口を閉じ吽形といいます。右を密迹金剛、左を
那羅延金剛ともいいます。或は両者合わせて密迹金剛という人もいます。

この両側に阿(ア)形と吽(ウン)形を配するというのは、神社の狛犬でも
使われているモチーフで、阿吽の呼吸という言葉も生まれています。これは
一般にはアは梵字の字母の先頭、ウンは最後の文字で両方で全宇宙を表わす、
などと判で押したように多くの本に書いてあるのですが、。。。。。。最初
この仁王について調べ始めた時、困ってしまいました。

梵字の配列(悉曇)の先頭は確かにアなのですが、最後の文字はキシャです。
通常の五十字門の他に般若経などの四十二門というのもありますが、こちら
の最後はダです。そもそもウンは字母ではなく、合成字であり、どうもこの
説は怪しいように思います。

アは梵字の先頭であり、密教で阿字観などというのも行なわれますが、万物
の根源であると考えられます。これに対してウンは通常阿シュク如来の種子
として知られ、また理趣経の中に突然のようにこの文字が出てくる所があり
ます。そして、この文字は能満願・大請願の意味を持ちます。ということは、
もしかしたら、アが全ての根源を表わすとともにウンが成就を表わしていて
両者一対で万物の生成と完成を表わしているのでしょうか。

と、ここまで考えた所で、私は弘法大師空海の「吽字義」という文書を知る
ことになります。この文書は空海が「吽」という1文字だけについて詳細に
解説したものです。対の文書で「阿字義」というのもあるそうですが未見です。

この「吽字義」によって上記の考えはかなり確かめられました。この文書の
説く所によれば、ア字は全ての音声の本体であり全ての真実相の根源である
一方、ウン字はh-a-u-mと分解できて、aはそのア字であり、残りのh-u-mは

  h - 一切諸法因  不可得 全ての物の究極的原因は計り知れない
  u - 一切諸法損減 不可得 全ての物の帰滅の姿は計り知れない
  m - 一切諸法吾我 不可得 全ての物の固定的実体は計り知れない

であり、またウン字には三句の法門『菩提を因とし、大悲を根とし、方便を
究竟とする』が込められており、この字の中に仏教の全ての教えが含まれて
いるとします。

やはりア字は根源であり、ウン字は全てだったのです。

そして、文字の先頭・最後というのは梵字の配列ではなく五十音の配列と
勘違いしたものでしょう。

なお、全てということに関しては真言の先頭によく現れるオンの文字も興味
深いものがあります。オームと書かれることもありますが、a-u-m の三字の
合成ともいわれ、インドの三主神を表すとも、仏の法身・報身・化身を表す
ともいわれます。これはビッグバンの音でもあり、ギリシャのパンにも通じ
るものがあります。



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